高血圧と影響を受けやすい人々

この記事を書いた人
坂口 海雲

大阪市立大学医学部を卒業後、大阪市立大学循環器内科に入局。ベルランド総合病院、大阪市立大学病院への勤務を経て、福島吉野スマイル内科・循環器内科を開院。Dr.AGAクリニックの総院長も就任中。

所属:日本内科学会日本循環器学会、医学博士(循環器内科)

高血圧と影響を受けやすい人々

高血圧の判断基準は最高血圧が135mmHg、最低血圧が85mmHgであり、どちらか一方だけでも満たしていたら高血圧と診断されます。自覚症状がない場合もありますが、高血圧を放っておくと重症化し、別の病気を引き起こすリスクがあるため注意が必要です。
この記事では、高血圧を受けやすい人々の特徴だけでなく、高血圧に対する予防方法についても分かりやすく紹介します。

-高齢者


高齢になるにつれて、血圧は高くなる傾向にあります。年を重ねるごとに血管は脆くなり、弾力性も低下するためです。弾力性が低下した血管は厚くて硬いため、血液を送るのにも圧力が必要になることから、血圧の値も高くなってしまうのです。

血圧が高い状態が続くと、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの病気の発症率が高くなります。しかし、高齢者の場合は血圧を下げすぎることにも様々なリスクがあるのです。
高齢者は血圧が下がると、脳に十分な量の血液を送ることができません。血液量が減ることにより、めまいや立ちくらみが起こって転倒する可能性があります。その他にも、脳の血液量が少ない状態が続くと認知症の発症にもつながります。 このように、高齢者は血圧が高くても低くてもリスクがあるため、値をコントロールすることがとても大切です。とはいっても、高齢者の血圧をコントロールすることは容易なことではありません。成人に比べて、薬物療法や運動療法での調整も困難です。
血圧をコントロールするためにも、家でも血圧を定期的に測定するようにしましょう。測定した数値を記録して病院を受診すると、コントロールできる可能性が高くなりますよ。

-妊娠


妊娠中に起こる高血圧を「妊娠高血圧症候群」といいます。妊娠高血圧症候群は体に異常が生じても自覚症状がほとんどありません。そのため、健診でようやく発見される場合も多く見られます。
しかし、妊娠高血圧症候群を放っておくと、下記の疾患を引き起こすリスクがあるのです。

・早産
・帝王切開
・胎児発育遅延
・常位胎盤早期剥離

妊娠高血圧症候群を予防するためにも、普段からの血圧管理がとても重要です。妊娠中の血圧は妊娠周期によって変動しやすく複雑であるため、自己判断での血圧管理は非常に危険です。毎日同じ時刻に血圧を測り、専門の医療機関を受診するようにしましょう。
日常生活において妊娠高血圧症候群の予防につながる方法は以下の通りです。

・体重管理
・十分な休息
・適度な運動
・妊婦検診の受診

体重管理は妊娠前のBMIに合わせた妊娠時の適正体重を参考にしましょう。以前は体重管理のために減塩食といった食事制限も推奨されていましたが、食事制限はかえって赤ちゃんが低栄養になるリスクが高いと近年では考えられています。食事量を減らすのではなく、食べ過ぎないことを意識していきましょう。
社会進出が進む現代の社会では、妊娠後も働き続ける女性が多く見られます。自分でも気づかないうちに無理していると疲れやストレスが溜まり、体調を崩す可能性があります。疲れやストレスは赤ちゃんにとっても良くありません。妊娠中はこまめに休憩をとることが大切なのです。

とはいっても、妊娠高血圧症候群を恐れて必要以上の安静や食事制限することは、かえって体に悪影響を及ぼします。妊婦検診にて医師と相談しながら、妊婦さんそれぞれに適した予防方法をとるようにしましょう。

-若年層


35歳以下で高血圧の症状がある場合、「若年性高血圧症」と呼ばれます。血圧は年齢を重ねていくにつれて高くなる傾向があるため、早い段階での改善が必要です。

若年層に起こる高血圧の原因には、何らかの疾患によるものと生活習慣によるものの2種類あります。

何らかの疾患による高血圧のことを「二次性高血圧」といいます。二次性高血圧は腎臓の障害や睡眠時無呼吸症候群、内分泌異常が主な原因です
自覚症状はほとんどありません。しかし、血圧が著しく高値になるとむくみや尿量低下、頭痛、動機などが生じる可能性があります。
一方、生活習慣による高血圧のことを「本態性高血圧」といい、高血圧の大半を占めます。二次性高血圧は原因となる疾患の治療や降圧薬の使用を検討しますが、本態性高血圧の場合はまずは生活習慣の見直しが必要です。 塩分摂取量や運動不足、飲酒など生活習慣のなかでも高血圧の原因となるものは様々です。これらの習慣を整えていくことが高血圧の予防につながります。


-仕事とライフスタイル


仕事とライフスタイルのバランスも高血圧の原因につながる可能性があります。以下のような勤務形態では高血圧になるリスクがあるので注意しましょう。

・長時間のデスクワーク
・三交替といったシフト体制
・連日の残業
・ストレスが溜まりやすい仕事

仕事によるストレスが原因で一時的に血圧が上昇する場合を「職場高血圧」といい、135/85mmHg以上が続く場合が当てはまります。
職場高血圧は仕事中のみ血圧が上昇します。休みの日に病院や健康診断で計測しても正常値となるため、発見が遅れることもあります。しかし、職場高血圧を放置しておくと、知らないうちに動脈硬化が進むリスクがあるため注意しましょう。 職場高血圧のように一時的に血圧が上昇する場合は、持続的に血圧が高い場合よりも脳血管疾患や心疾患の発症率が高くなる報告もあります。

職場高血圧を予防するためには、職場でも血圧を測ることが大切です。職場に血圧計がない場合はスマートフォンアプリを取り入れてみると良いでしょう。毎日同じ時間に図ることで、血圧の変動を把握することが可能になります。自覚症状がなくても、職場で多大なストレスを感じていると思う方は、一度検討してみてくださいね。

まとめ

今回の記事では、高血圧になりやすい人々の特徴について紹介してきました。自覚症状がないからといって高血圧を放っておくと、他の疾患を引き起こすリスクも高くなります。血圧の変動が激しくなったり、高値が続いたりするようなことがあれば、病院を受診しましょう。日頃から血圧管理していくことが高血圧を予防することにつながるのです。