高血圧と生活習慣の改善

高血圧と生活習慣の改善

高血圧は多くの方にとって重要な健康問題とされています。通常、血圧は120/80 mmHg以下が理想とされますが、135/85 mmHg以上で高血圧の診断がなされることが多いです。高血圧を放置していると心筋梗塞や狭心症などの心臓病、脳梗塞や脳出血などの脳卒中のリスクを高めてしまいます。

高血圧を予防するためには様々な生活習慣の見直しが基本です。今回は高血圧と上手に付き合うための生活習慣のポイントをご紹介します。

-食生活の見直し

「食べ物で血圧がかわるなんて!」と思うかもしれませんが、高血圧を避けるためには食事を見直すことがとても重要になります。
なぜなら高血圧の主な原因は、塩分の摂りすぎや不健康な食習慣によるものだからです。高カロリーの食事や栄養素の不足が高血圧を悪化させます。

日本人の平均的な塩分摂取量は約10.1g/日で、これは日本の高血圧予防ガイドラインで推奨される1日の食塩摂取目標である6g未満を大きく上回っているのです。
この問題は日本の食文化に原因があります。日本人は塩分を含む調味料や味噌汁を日常的に摂取しています。また、ラーメンやおつまみ、加工食品などを食べすぎなのです。これらの食品には見えない塩分(ナトリウム)がたくさん含まれていています。ナトリウムは体内の水分バランスを助ける役割があり、塩分の摂取量が増加すると、体内のナトリウムが増加し血液量の増加につながります。血液量が増加すると心臓に負担がかかり血圧が上昇するのです。

一方で、野菜や果物などカリウムを多く含む食品は血圧を下げる助けになります。カリウムは余分なナトリウムを体外に排出し、血圧を自然に下げる効果があります。そのため、塩分の摂取を控えカリウムが豊富な食品を摂ることが高血圧対策に重要です。また、脂肪分が低く、繊維質が豊富な食品(全粒粉のパン、玄米、魚、鶏肉)を選ぶことも重要なので是非参考にしてみて下さい。

塩分摂取の制限、野菜や果物などのカリウムを取り入れること、毎日のコンビニ弁当をやめてみる、麺類の汁は必ず残すことなどできることから始めていきましょう。

-運動不足の見直し

高血圧を予防する上で適度な運動はとても重要です。具体的にはこのような効果があります。

・交感神経の活動が穏やかになり、結果として血管がリラックスして拡張します。これにより血液が血管を通りやすくなり血圧が自然と下がります。
・利尿作用が活発になります。これにより体内の余分な水分が減って血圧が下がります。

また、定期的な運動は血圧コントロールには欠かせない肥満予防にも繋がります。

適度な運動としては1日あたり約20〜30分の有酸素運動が理想的です。有酸素運動とはウォーキングやジョギング、水泳などを指します。適度な運動をすることで個人差はありますが、収縮期血圧(上の数値)が平均で4〜9mmHg程低下することが期待できるため、健康な血圧を維持する方法としておすすめです。
一方で、重いウエイトリフティングや激しいスプリント走は、血圧を一時的に高めるので注意が必要です。
日常の中で適度な有酸素運動を取り入れて、無理のない範囲で継続することが何よりも大切です。運動不足の状態から始める場合は無理をせずウォーキングや軽いジョギングなど、心臓に優しい運動から始めましょう。


-睡眠とストレス

健康な生活を送る上で良質な睡眠はとても大切です。特に高血圧を予防するためにはしっかりとした睡眠が欠かせません。では、なぜ睡眠が高血圧にこれほど大きな影響を与えるのでしょうか?
まず睡眠不足が続くと、体はまるでストレスを受けているかのように「緊張」状態に陥り、血圧が上昇することがあります。心臓は血液を体中に送り出すポンプの役割を果たしていますが、休息が不足しているといつも以上に強く動かなければならなくなり、これが血圧を上昇させる一因です。

ぐっすり眠っている時は血圧が自然と下がるものですが、睡眠不足が続くと、この血圧の自然な低下が妨げられ「血圧が下がる時間」が短くなってしまいます。その結果日中の血圧が高くなる傾向にあるのです。また、睡眠不足は体の中で小さな「炎症」を引き起こしやすく、これが血管の健康に悪影響を及ぼし血圧を上げる原因となると言われています。

睡眠は血管を柔軟に保つのにも重要な役割を果たします。睡眠が不足すると血管が硬くなり、血液の流れが悪くなります。血管が柔らかければ血液はスムーズに流れますが、硬くなると血液の流れが悪くなり、それが血圧の上昇につながります。これが動脈硬化というものです。
このように、睡眠不足は様々な方法で高血圧に影響を及ぼします。日々の忙しさに追われてなかなか十分な睡眠を取れないこともあるでしょうが、高血圧を予防し健康な生活を送るためには、毎晩7〜8時間の質の良い睡眠を確保することを心がけましょう。

-アルコールと喫煙

お酒の飲みすぎと喫煙も要注意です。アルコールは血圧を上げ、飲酒量が多いほど血圧の平均値が上がることが明らかにされています。アルコールの摂取量は男性が1日20〜30ml以下、女性は10〜20ml以下。お酒の種類に関係なく毎日の飲酒量が多いほど血圧の平均値が上がります。目安は「日本酒1合」「ビール中瓶1本」「ウィスキーダブル1杯」「ワイン2杯」程度です。お酒の適量を守って楽しみましょう。

喫煙に関しても健康上良い事が起こることはほとんどありません。特にタバコの中に含まれている様々な成分が血管を傷つけ動脈硬化を促進させます。また、血管を収縮させ、血圧を上昇させる原因になります。一筋縄ではいかないのが禁煙です。タバコの変わりにガムを嚙んでみたり、電子タバコへの変更や禁煙外来の利用を検討してみてください。徐々に本数を減らしていき、健康のためには禁煙を目指しましょう。


-季節ごとの対策

血圧の管理は季節によっても注意する点が異なります。
冬の寒暖差や温度差による刺激は急激に血圧を上昇させる原因になります。寝ている間に下がった血圧が起床時に急激に上がることを「モーニングサージ」と言います。冬は特にモーニングサージが起こりやすいです。そのため布団から出る前には室内を暖める、入浴前には脱衣所を暖め、浴室との温度差を少なくするなどの対策をしていきましょう。

夏は水分補給が特に重要です。高血圧の方が水分不足で脱水に陥ると脳梗塞を発症する原因となります。2時間おきにコップ1杯程度の水を飲むことを目安とし、屋外などで活動している人はそれ以上飲む事を意識しましょう。


まとめ

高血圧は生活習慣で改善できるものです。適切な食事療法と運動療法、アルコールやタバコを控えること、十分な睡眠とストレス管理。これらを心がけることで血圧を下げる助けになります。小さな一歩から始めて健康的な生活を目指しましょう。