高血圧の診断と治療

高血圧の診断と治療

「健康診断で高血圧と言われたけど、どうしたらいいのか分からない」「高血圧は何科を受診したらいいの?」皆さんのなかには、こういった悩みを抱えている方もおられるでしょう。診療科が分からなくて受診するタイミングを失い、そのまま治療せずに過ごしてしまうこともあるかもしれません。

しかし、高血圧は放っておくと合併症を引き起こし、取り返しのつかない状況になる可能性があります。高血圧が思い当たる方は、手遅れになる前に病院を受診し、検査を受けることが大切です。

この記事では、高血圧の診断方法や治し方、合併症などについて説明していきます。順番に見ていきましょう。

受診するべき診療科とは?

もし何科を受診するべきか迷ったら、まずはかかりつけ医に相談するようにしてください。
大きな病院での詳しい検査が必要な場合でも、かかりつけ医が受診する科について説明するため、受診先に迷うことはありません。
かかりつけ医がいない場合は、高血圧の初診が多く行われている内科か、高血圧の専門的な治療を行うことが可能な循環器科を受診するようにしましょう。

-診断・検査

病院で行われる高血圧の診断方法には、問診、診察、身長・体重・腹囲測定、血圧測定、血液検査、尿検査、レントゲン検査、心電図検査、脈波検査といった様々な検査が用いられます。とはいっても、全員がすべての検査を受ける必要はなく、個人に合わせた検査のみ行われます。それぞれの検査について、順番に見ていきましょう。

まずは問診についてです。現病歴・既往歴・家族歴・生活習慣・飲んでいる薬の種類などを確認します。原因を見つけたり、治療方法を決めたりするための貴重な情報です。思いつくものはすべて問診のときに医師へ伝えるようにしましょう。

次は診察です。診察では、医師が心臓の音を聴くなどして、全身の臓器に異常がないかを確認します。急ぎの治療を必要とする病気がないかを確認したうえで、治療法を検討します。

外見における測定も検査項目としてとても大切です。身長・体重・腹囲測定を行い、BMIや腹囲を参考に肥満やメタボリックシンドロームに該当するかを確認します。メタボリックシンドロームに当てはまる場合、医師や保健師などから指導を受けることもあり、生活習慣の見直しが必要です。

血圧測定も行われますが、血圧はそのときの状況によって数値が変動しやすいです。そのため、1回の測定ではなく、1日のなかで何回か測定した上で判断されます。


ちなみに高血圧の診断基準は、日本高血圧学会では診察室血圧が140/90 mmHg以上、家庭血圧が135/85 mmHg以上と定められています。その他にも診断基準はたくさんありますが、覚えるのが難しければ、135mmHgという数字だけ覚えておきましょう。

血液検査では、腎臓や肝臓など様々な臓器に関わる項目を行い、糖尿簿や脂質異常症などの合併症、ホルモンの乱れなどがないか確認します。 尿検査では、腎臓に異常がないかを確認します。タンパク尿や血尿がみられている方は、腎臓の血管が傷ついて起こる腎硬化症の可能性があるため、注意が必要です。
レントゲンや心電図検査は必要な方のみ行われます。心臓の拡大や不整脈など、心臓に異常がないかを確認します。
脈波検査では、血管のつまり具合を確認することが可能です。両手・両足首の4か所で同時に血圧測定を行い、血管の硬さを推測します。

-治療方法

高血圧の治し方は、血圧を下げることが基本です。血圧を下げるには、「血管を広げること」と「血液量を減らす」のいずれかが必要です。血圧を下げる方法として、物療法と非薬物療法の2種類があります。

薬物療法は、薬を使って治療する方法です。血管を広げる薬には、カルシウムチャンネル阻害薬、アンギオテンシン変換酵素阻害薬、アンギオテンシン受容体阻害薬などがあります。一方で、血液量を減らす薬には降圧利尿薬、β阻害薬などがあります。

薬の種類は種類がたくさんありますが、全員に効果が期待できるような薬はありません。人によっては、複数の高血圧の薬を処方される方もおられます。なぜなら、高血圧の原因は人それぞれによって異なるためです。そのため高血圧を薬で治療するには、血圧を高くする要因を見つけ、その要因に合った薬を選ぶことがとても大切なのです。

薬物療法に対し、非薬物療法は薬を使わずに治療する方法です。生活習慣の改善が主な方法となるため、高血圧だけでなく糖尿病や高コレステロール血症などの改善にもつながります。すでに高血圧の薬を飲んでいる方は、量を減らしたりやめたりすることも可能です。

非薬物療法における血管を広げるための方法には、食事制限や禁煙、有酸素運動があります。一方で、血液量を減らす方法として、ダイエットや減塩があります。

しかし、非薬物療法は2,3日だけ行っても効果が期待できません。どのようにしたら続けられるかを見直し、習慣化していくことがとても大切です。


合併症のリスクと予防

高血圧の状態が長く続いた場合、血管が硬くなる「動脈硬化」につながる可能性があります。動脈硬化が進んだ血管はもろくて破けやすく、以下のような合併症を引き起こしやすくなります。

・脳血管疾患(脳梗塞・脳出血)
・心疾患(狭心症・心筋梗塞・狭心症)
・眼疾患(高血圧性網膜症)
・腎臓疾患(腎硬化症・腎不全)

これらの合併症は症状が出るまでに時間がかかるため、気づいた頃には病状が進行していることもあります。

合併症を予防するために生活習慣を改善することはもちろん大切です。しかし、まずは病院で検査を受けるようにしましょう。検査を受け、今の段階で高血圧が他の臓器にどの程度悪影響を及ぼしているのかを知ることがとても大切です。自分の状態を把握し、その状態に合った治療を行うことが高血圧を改善する近道になるのです。

まとめ

今回の記事では、高血圧の診断方法や治し方について解説しました。今はなんともないと思っていても、高血圧をきっかけに今後別の病気を引き起こすかもしれません。今のうちに病院を受診して検査を受け、高血圧の改善につなげていきましょう。