仕事とライフスタイルの影響

この記事を書いた人
坂口 海雲

大阪市立大学医学部を卒業後、大阪市立大学循環器内科に入局。ベルランド総合病院、大阪市立大学病院への勤務を経て、福島吉野スマイル内科・循環器内科を開院。Dr.AGAクリニックの総院長も就任中。

所属:日本内科学会日本循環器学会、医学博士(循環器内科)

仕事とライフスタイルの影響

「ストレス」を溜め込むことで高血圧の原因になるなど、健康に対して悪い影響が報告されています。そうは言っても、仕事でのストレスは自動的に溜まっていくもの…切り離そうにも切り離せませんよね。そのため、私たちは仕事で溜まったストレスをうまく発散させていかなければなりません。ストレスをうまく発散させるためには、仕事やプライベートといったワークライフバランスを調整する必要があります。そこで、今回は仕事でストレスを溜めてしまう原因からストレスを発散させる方法までを簡単に解説していきます。

仕事でストレスを溜める要因


-労働時間とストレスの関係

長時間労働はストレスを溜めやすいと思われがちですが、実は「長時間労働自体は心身のストレス反応には直接関係しない」ということを東京医科大学が報告をしています。しかし、長時間労働によって「睡眠時間の短縮」や「食事の不規則化」を引き起こしている場合、長時間労働はメンタルヘルスの悪化に間接的に関わってくることも同時に発表しています。残業をしていて睡眠時間や食事に影響が出そうな場合は、早めに切り上げてストレスを溜めにくくするのも対策の一つです。

-テレワーク環境特有のストレス

コロナ感染により浸透したテレワークはストレスを溜める要因になります。特に、まだ仕事になれておらず相談相手がいない新入社員にとって、テレワーク環境はコミュニケーションをとりづらい部分があり、それがストレスになっているようです。今まで出社し、対面で直接コミュニケーションをとることに煩わしいイメージがありましたが、時と場合によっては良好な人間関係を構築に役立つのでしょう。

また、テレワーク環境は新人だけではなく、仕事に慣れた社会人にとってもストレスを溜める要因になります。ストレスを感じる理由としては「孤独を感じるようになった」「仕事のオンオフを切り替えにくくなった」などです。
以上から、テレワークや対面でのコミュニケーションには、それぞれメリットとデメリットがあるようです。これからの社会では、ストレスを溜めないよう二つのコミュニケーションツールをうまく使い分けていく必要がありそうです。

-仕事のストレスによる職場高血圧の怖いところ

職場高血圧の怖いところは「発見されにくく、治療が遅れがち」というところです。職場高血圧は職場でのストレス過多により、職場でのみ高血圧になることを指します。
職場以外では血圧は正常なため、健康診断ではなかなか発見できません。そのため、高血圧の治療が遅れてしまい、将来的に高血圧が進行してしまいます。気が付いた時には、動脈硬化が進行し心筋梗塞や脳卒中を引き起こしかねない状況になっているかもしれません。自宅だけではなく職場でも血圧測定を行い健康管理をしっかり行うことで、早期発見に繋げていきましょう。

仕事のストレスとうまく付き合うコツ


-ワークライフバランスとストレスの関係

ワークライフバランスとは「仕事」と「プライベート」のバランスを指し、この2つを両立させることがストレス軽減に繋がるとされています。
これは、ワークライフバランスを整えることで、労働生産性の向上が期待できるからです。日本は先進国の中で労働生産性が低いと言われています。この低い労働生産性を改善させるために、働き方改革など国ぐるみでワークライフバランスを整える環境づくりを支援しています。こうすることで、社会全体の生産性を維持しながら、労働時間を短縮させることが期待できます。こうしてできた時間をプライベートに回すことで、仕事で溜まったストレスを発散させることができそうですね。

-エンゲージメントの向上でストレス対策を

仕事におけるエンゲージメントが高いとストレス対策になります。突然登場した「エンゲージメント」これは一体何なのでしょうか?

エンゲージメントとは「約束」や「契約」などのことを指しますが、仕事においては「従業員の仕事に対する誇り」を指します。仕事に対して自分がどれだけ誇りをもってやっているかどうかが、ストレスに対する耐性になるのです。従業員のエンゲージメントが高い環境では、社員同士が密にコミュニケーションをとり、一つの目標を達成するために社員全員が一致団結し取り組んでいます。こうした仕事環境は、ストレスに晒されにくい環境と言えます。
エンゲージメントを高めるためには、従業員一人一人が成長していく必要もありますが、職場環境を従業員一人一人に合わせるなど、企業側の努力も必要とされています。

まとめ

今回、仕事からのストレスによる高血圧を防止するために、ストレスを溜めにくくする方法とストレスを発散させる方法について簡単に解説させていただきました。
今回の内容をまとめると

・長い労働時間はストレスに直接関係しないが、ワークライフバランスを崩してしまう。
・「仕事」と「プライベート」を両立させることがストレス軽減に繋がる。
・テレワークと対面でのコミュニケーションは時と場合によって使い分けが必要。
・エンゲージメントが高い職場を目指すことが、ストレスに晒されにくい職場になる

仕事ではほぼ確実にストレスは溜まります。ストレスの溜め過ぎは職場高血圧の原因となり、少しずつ皆さんの身体を蝕んでいきます。最終的に心筋梗塞や脳卒中といった病気に発展するのは避けたいですよね。命に関わるような病気を発症しないためにも、早めに健康管理を行うことが大切です。