開業医が儲かる仕組みとは?収益構造・集患方法・成功する診療科を解説

開業医が儲かる仕組みとは?収益構造・集患方法・成功する診療科を解説

開業医は儲かる」と聞く一方で、「儲からない」「やめとけ」という声も目にすると、どちらを信じればいいのか分からなくなるのではないでしょうか。
実際、SNSや口コミサイトには両極端な情報が入り混じっており、これから開業を検討する医師にとって、判断の軸を見失いやすいテーマの一つです。
本記事では、開業医の収益構造を検討している医師に向けて、以下の内容を順に解説します。

  • ●開業医が儲かると言われる収益構造の基本
  • ●公的データで見る開業医の収益実態
  • ●「開業医は儲からない」と言われる理由とその実態
  • ●儲かる仕組みを支える集患・経営の要素
  • ●診療科別に見る収益性の違い
  • 年収を左右するその他の要因とよくある疑問

「儲かる/儲からない」という二元論ではなく、何がその差を生むのかという構造そのものを理解することが、開業を判断するうえでの土台になります。公的データと実態の両面から、順を追って見ていきましょう。

開業医が儲かると言われる収益構造の基本

開業医の収入がどのように決まるのか、その仕組みを理解しないまま「儲かる」「儲からない」を論じても、判断材料としては不十分です。まずは診療報酬の基本的な仕組みと、開業医と勤務医の収入の決まり方の違いから確認していきましょう。

診療報酬の仕組み|出来高払いが収益の土台

日本の保険診療は、診療行為ごとに点数が定められた「診療報酬点数表」に基づき、1点10円で計算される出来高払い制度が基本です。

診察・検査・処置・投薬など、実施した医療行為の積み上げによって収益が決まる仕組みであり、患者数と診療内容の両方が収入を左右します。

保険診療による収益に加え、健康診断や予防接種、美容医療などの自由診療を組み合わせることで、収益源を多様化している開業医も少なくありません。

自由診療は価格設定を医療機関側で決められるため、保険診療だけに依存しない収益構造を作る手段として位置づけられています。

個人開業医と医療法人の違いが収益構造を分ける

開業医の収益構造は、個人開業か医療法人化しているかによっても異なります。医療法人化すると法人税率が適用される一方で、役員報酬の設定や退職金の活用など、個人事業主にはない節税手段が使えるようになります。

厚生労働省の調査によれば、一般診療所の損益差額率は個人開設で28.8%、医療法人で4.8%となっています(令和6年度)。

個人と医療法人で数値が大きく異なるのは、医療法人の場合は院長自身への給与(役員報酬)を経費として計上したうえでの損益であるのに対し、個人開業医の損益差額はそのまま院長本人の取り分に近い性質を持つためです。

出典:健康保険組合連合会「第25回医療経済実態調査の結果に対する見解」
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001603473.pdf

開業医と勤務医の収入の決まり方の違い

勤務医と開業医とでは、収入がどのような要因によって決まるのか、その性質そのものが大きく異なるのです。両者の違いを整理すると、以下のようになります。

比較項目 勤務医 開業医
収入の決まり方 病院の給与規定に基づく固定給 診療報酬と経営状況次第
収益変動の要因 ほぼ影響なし 患者数・診療単価・経費構造に直結
経営リスク 負わない 借入返済・固定費を自ら負う

勤務医の給与が病院の規定に基づく固定給であるのに対し、開業医の収入は診療報酬と経営努力の掛け合わせで決まります。

「儲かる仕組み」とは、単に診療報酬が入ってくるという意味ではなく、患者数・診療単価・経費構造という3つの変数を自分でコントロールできる立場になる、という点にあります。

この構造を理解したうえで、次章では実際の収益データを見ていきましょう。

データで見る開業医の収益実態

「儲かる仕組み」を理解したところで、実際の数字を見ていきましょう。ここでは厚生労働省の最新調査から、開業医の収益実態を客観的なデータで確認します。

個人開業医の損益差額率は約29%の黒字水準

厚生労働省「第25回医療経済実態調査」によれば、一般診療所の損益差額率は個人開設で28.8%、医療法人で4.8%の黒字となっています(令和6年度)。

診療科別に見ると、個人開設の場合で耳鼻咽喉科41.4%・精神科40.7%・眼科36.2%と高水準な科がある一方、産婦人科15.1%・整形外科24.4%とやや低めの科もあり、診療科による差が存在します。

診療科 損益差額率(個人) 損益差額率(医療法人)
耳鼻咽喉科 41.4% 9.9%
精神科 40.7% 1.6%
眼科 36.2% 5.3%
小児科 29.9% 4.8%
内科 28.3% 4.2%
外科 25.4% 0.5%
整形外科 24.4% 2.6%
産婦人科 15.1% 1.7%

毎月の診療報酬明細を見ながら、実際にどれだけ手元に残るのか感覚がつかめずにいる先生も多いのではないでしょうか。損益差額率とは、収益から医業費用を差し引いた割合であり、開業医個人の取り分の目安になる数値です。

開業医の平均年収は勤務医のおよそ2倍

収益構造を年収という形で見ると、その差はより明確になります。

一般診療所院長の平均年収は有床3,232万円・無床2,872万円であるのに対し、一般病院に勤務する医師の平均年収は1,485万円です(令和6年度)。単純比較で、開業医(無床)は勤務医のおよそ1.9倍の水準にあります。

区分 平均年収(令和6年度)
一般診療所院長(有床) 3,232万円
一般診療所院長(無床) 2,872万円
一般病院勤務医 1,485万円

※上記の診療科別損益差額率・平均年収データは、いずれも前章で示した厚生労働省「第25回医療経済実態調査」によるものです。

平均値だけで判断すると実態を見誤る

ここまでの数字を見て、「自分も開業すればこの水準に届く」と単純に考えるのは早計です。平均値は、突出して収益の高い一部のクリニックによって引き上げられている場合があり、同じ調査データでも中央値で見ると平均値を下回る傾向があることが知られています。

つまり、「開業医は平均で年収3,000万円近い」という数字は事実である一方、それがすべての開業医に当てはまるわけではありません。診療科・立地・開業からの経過年数によって、実際の収益は大きく分布します。

次章では、この差がなぜ生まれるのか、「儲からない」と言われる理由を具体的に見ていきましょう。

「開業医は儲からない」と言われる理由とその実態

前章で見た通り、開業医の平均年収は勤務医を上回る水準にあります。それでもなお「儲からない」「やめとけ」という声が絶えないのはなぜでしょうか。ここでは、そう言われる背景にある具体的な要因を一つずつ確認していきます。

巨額の初期投資と借入返済の重さ

クリニック開業には数千万円規模の初期投資が必要であり、その多くを金融機関からの借入で賄うのが一般的です。損益計算上は黒字であっても、そこから毎月の借入返済額を差し引くと、手元に残る金額は大きく目減りします。

損益差額には元金の返済分や将来の設備投資のための留保金が含まれていないため、「決算書上は黒字なのに、生活実感としてはあまり豊かになった気がしない」という感覚を抱く開業医が一定数存在するのも無理はありません。

開業直後の数年は、収益の多くが借入返済に回ってしまうという構造そのものが、「儲からない」という印象につながりやすい要因です。

医師と経営者の二足のわらじという負担

勤務医時代は診療に専念していればよかった一方、開業医になると診療と並行して経営判断も担うことになります。スタッフの採用・労務管理、資金繰り、広告や集患の方針決定など、医療行為以外の業務が日常的に発生するのです。

こうした業務は診療報酬には直接反映されないにもかかわらず、時間と労力を確実に消費します。東京保険医協会の調査では、開業医の2割弱(18.4%)が1日11時間以上勤務していることが明らかになっており、収益額だけでは測れない負担が「儲かっている実感の乏しさ」に結びついているといえるでしょう。

出典:東京保険医協会「開業医実態意識基礎調査①増える長時間労働」
https://www.hokeni.org/docs/2022030200012

自動精算機・問診ツール・電子カルテ連携・予約システムといった院内DXの活用は、こうした診療外業務の負担を軽減する手段として注目されています。

医師自身の体力を温存できれば、その分の時間と気力を集患や診療の質の向上に振り向けやすくなり、結果的に収益改善にもつながるという側面があるです。

集患の難しさと診療所間の競争激化

診療所の数は年々増加しており、2015年以降の10年間で診療所は4,539施設増加しています。病院数や歯科医院数が減少傾向にあるのとは対照的に、診療所同士の患者獲得競争は年を追うごとに厳しくなっているのが実情です。

出典:帝国データバンク「医療機関の倒産・休廃業解散動向調査(2025年)」
https://www.tdb.co.jp/report/industry/20260123-iryoukikan2025/

開業さえすれば自動的に患者が集まる時代ではなく、立地選定や情報発信を含めた集患の巧拙が、収益の差として如実に表れやすくなっています。

廃業率の実態|主因は「儲からなさ」ではなく後継者不足

「開業医廃業率」と検索する背景には、「頑張って開業しても、結局続かないのではないか」という不安があるのではないでしょうか。この不安に、最新のデータで正面から答えます。

前掲の帝国データバンクの調査によれば、2025年の医療機関の休廃業・解散は823件、倒産は66件で、いずれも過去最多を更新しました。休廃業・解散は倒産の12.5倍にのぼり、特に診療所ではその差が23.6倍に達しています。

ここで重要なのは、休廃業・解散の急増が「収益性の悪化」を主因としているわけではないという点です。同調査では、診療所経営者の56.7%が70歳以上であり、休廃業・解散が増え続けている最大の要因は、経営者の高齢化と後継者不足にあるとされています。

倒産(法的整理を伴う経営破綻)に限れば66件にとどまり、休廃業・解散の大半は「経営が立ち行かなくなった」のではなく「後継ぎがいないまま引退時期を迎えた」結果と読み取れます。

なお、収益性そのものについては、日本医師会が令和6年度の診療所を対象に実施した調査で、赤字割合が約4割に達し、医業利益率の中央値は1.1%(平均値3.2%を下回る水準)にまで悪化していることが明らかとなっているのです。

物価高や人件費上昇、コロナ関連補助金の終了が主な要因とされ、「開業医は儲からない」という言葉が指す実態の一部は、こうした足元のコスト増にも表れています。

出典:日本医師会「令和7年診療所の緊急経営調査結果」
https://www.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20250917.pdf

「儲からない」は何が原因なのか|4つの要因の整理

ここまで見てきた要因を整理すると、次のようになります。

  • ●初期投資の借入返済により、黒字でも手元資金の増加を実感しにくい
  • ●診療以外の経営業務が、収益に反映されない負担として重くのしかかる
  • ●診療所数の増加により、集患の巧拙が収益差を生みやすくなっている
  • ●廃業の主因は収益性の悪化ではなく、経営者の高齢化・後継者不足である

「儲からない」という言葉には、収益そのものの問題と、収益の実感しにくさという2つの異なる要因が混ざり合っているのです。

この違いを理解しておくことが、次章で解説する「儲かる仕組みを支える要素」を正しく捉えるための前提になります。

開業医が儲かる仕組みを支える3つの要素

前章で見た「儲からない」という声の背景には、収益構造そのものよりも、経営努力によって埋められる部分が多く含まれていました。ここでは、実際に収益を伸ばしている開業医に共通する3つの要素を見ていきます。

集患力|立地選定とマーケティングの巧拙

診療所数が増加し続けるなかで、収益の土台となるのは何より患者数です。開業前の診療圏調査で人口動態や競合クリニックの分布を把握したうえで立地を選ぶことは、開業後の集患力を大きく左右します。

近年は、立地の良し悪しだけでなく、Web集患の巧拙も収益差を生む要因になっています。ホームページやMEO対策(地図検索対策)を通じた情報発信は、初診患者の来院経路として存在感を増しており、「良い立地に開業すれば自動的に患者が集まる」時代から、「立地と情報発信の両輪で集患する」時代への移行が進んでいると言えるでしょう。

自由診療の導入による収益源の多様化

保険診療は診療報酬点数によって価格が固定されているため、患者数を増やす以外に単価を上げる余地が限られます。

これに対し、自由診療は医療機関側が価格を設定できる点が特徴です。単価を医療機関側の裁量で決められることから、収益構造に幅を持たせる手段として活用されています。

皮膚科における美容医療、内科における健康診断・予防接種、その他自費診療メニューの導入などが代表例です。

ただし、自由診療の比重を高めすぎると保険診療を軸とした地域医療のニーズから離れてしまう側面もあるため、自院の診療方針と患者層に合った範囲での導入が前提になります。

専門性・複数科展開による差別化

近隣に競合クリニックが増えるなかで、「何でも診る」だけでは差別化が難しくなりつつあるのが実情です

特定領域の専門性を打ち出すことで、遠方からでも患者が来院する診療所を作れる可能性がある一方、複数の診療科を組み合わせることで、紹介患者やついで受診を増やす戦略を取る開業医も少なくありません。

差別化の方向性 想定されるメリット 想定される留意点
専門特化 遠方からの集患・紹介患者の増加 対象患者層が限定される
複数科展開 患者の相互紹介・来院頻度の向上 各科の専門医確保・人件費増

どちらが正解というものではなく、自院が立地する地域の患者ニーズと、自分自身の専門性・経営体力を照らし合わせたうえで選ぶべき方向性だと言えます。

承継開業(M&A)という選択肢

新規開業だけが収益を伸ばす道ではありません。既存の患者基盤や設備を引き継ぐ承継開業(M&A)は、立地選定や集患のリスクを抑えながら収益基盤を確保できる手法として、近年選択肢の一つに加わっています。

特に、診療所経営者の高齢化が進む現状(前章参照)は、承継を検討する開業医にとって物件・患者基盤の選択肢が増える局面とも言えます。

ゼロから数千万円規模の借入を起こして新規開業するリスクを避けたい勤務医にとって、後継者不在に悩む既存クリニックを引き継ぐ承継開業は、開業に伴うリスクを抑えながらキャリアを転換できる合理的な選択肢として、注目度が高まっているのです。

集患力・自由診療・差別化・承継という4つの要素は、いずれも「儲かる仕組み」を偶然ではなく意図的に設計するための手段です。

次章では、これらの要素が診療科ごとにどう作用するのか、収益性の違いを具体的に見ていきます。

儲かる診療科・儲かりにくい診療科の実態

「開業医儲かる科」と検索する背景には、これから開業する診療科を選ぶ判断材料が欲しいという意図があるのではないでしょうか。前章までのデータをもとに、科ごとの差がなぜ生まれるのか、その背景を掘り下げていきます。

損益差額率が高い科に共通する特徴

耳鼻咽喉科・精神科・眼科などは、個人開業で30〜40%台という高い損益差額率を示しています。これらの科に共通するのは、高額な医療機器への依存度が比較的低く、材料費率を抑えやすいという点です。

診察と検査機器(内視鏡、視力検査機器など)を中心とした診療スタイルであれば、外来1件あたりの原価が低く、利益率を確保しやすい構造になります。

また、精神科・耳鼻咽喉科・眼科は再診・継続通院の比率が高い傾向にあり、一定の患者基盤を築ければ、新規集患への依存度が相対的に下がるという側面も、収益の安定につながっていると考えられます。

内科の損益差額率が中位にとどまる理由

内科開業医儲からない」と検索されることがありますが、データ上、内科の損益差額率は個人開業で28.3%と、全体平均(28.8%)とほぼ同水準です。極端に低い数字ではないものの、耳鼻咽喉科や精神科と比べると見劣りする印象を受けるかもしれません。

内科が突出した高収益になりにくい背景には、診療所数そのものが最も多く競争が激しいこと、生活習慣病などの継続診療が中心で単価が上がりにくいことが挙げられます。一方で、内科は地域医療のニーズが底堅く、開業立地さえ適切であれば安定した患者基盤を築きやすい科でもあるのです。

「儲かりにくい」というより、「単価より患者数で収益を積み上げる構造の科」と捉えるのが実態に近いでしょう。

産婦人科・整形外科など設備投資が重い科の傾向

産婦人科・整形外科は、損益差額率が個人開業で15〜24%台と、他科と比べてやや低めの水準です。背景には、分娩設備やリハビリ施設など、開業時の設備投資額が大きく、減価償却費や維持コストが収益を圧迫しやすいという構造があります。

これらの科は開業資金そのものが大きくなる傾向にあるため、損益差額率の数字だけを見て「儲からない科」と判断するのは早計です。投資規模に対するリターンや、地域における診療需要の大きさもあわせて考慮する必要があるでしょう。

診療科だけで収益は決まらない

ここまで科ごとの傾向を見てきましたが、同じ診療科であっても、立地・自由診療の有無・集患の巧拙によって収益は大きく変動します。

医療法人の損益差額率を見ると、個人開業と比べて科ごとの差が縮小する傾向にあることも、経営規模や運営体制によって収益構造が変わることを示す結果です。

診療科 収益性の傾向 主な要因
耳鼻咽喉科・眼科・精神科 高め 材料費率が低く、継続通院比率が高い
内科 中位 競争が激しく単価が上がりにくいが、患者数で積み上げ可能
産婦人科・整形外科 やや低め 設備投資額が大きく減価償却負担が重い

「儲かる科を選ぶ」という発想だけでなく、「自分が開業する地域でその科にどれだけのニーズがあるか」という視点を組み合わせることが、実際の収益を左右します。

次章では、診療科以外に年収を左右する要因を見ていきましょう。

開業医の年収を左右するその他の要因

診療科や集患力だけでなく、開業のタイミングや経営判断によっても、開業医の年収は大きく変わります。ここでは、年収の水準や変動に関わるその他の要因を見ていきます。

開業年齢と生涯年収の関係

開業のタイミングは、生涯を通じた収入を左右する重要なテーマです。30代での開業は経営期間を長く確保できる一方、開業資金の借入返済期間も長く取れるため、月々の返済負担を抑えやすいという利点があります。

反対に、50代以降での開業は、勤務医時代に蓄積した自己資金や経験を活かせると一方、経営できる期間そのものが短くなるため、借入返済のペースを速める必要があります。

「儲かる開業医」の多くは、開業年齢に応じて借入計画と経営期間のバランスを設計しているという共通点があります。年齢だけを見て有利・不利を判断するのではなく、自己資金の準備状況や、退職後を見据えた資金計画とあわせて検討することが重要です。

法人化による節税効果と年収の見え方

個人開業医が一定の収益規模に達すると、医療法人化によって節税効果を得られるケースがあります。

個人事業主の場合、クリニックの利益がそのまま院長の所得として課税されるのに対し、医療法人化すると院長自身への支払いを役員報酬として設定できるため、所得の分散や退職金制度の活用による節税余地が生まれます。

医療法人の損益差額率(4.8%)が個人開業(28.8%)より大幅に低いのは、赤字だからではなく、院長給与をすでに経費として差し引いた後の数字であるためです。この違いを理解しておかないと、「医療法人化すると儲からなくなる」という誤解につながりかねません。

年収5,000万円・1億円は自由診療の比重で現実味が変わる

「開業医 年収1億円」は非現実的な数字ではありませんが、保険診療のみでこの水準に到達するのは容易ではありません。保険診療は診療報酬点数によって単価の上限が事実上決まっているため、患者数を大幅に増やす必要があります。

これに対し、美容医療や自費診療メニューを中心に据えるクリニックでは、1件あたりの診療単価を数万〜数十万円に設定できるため、患者数がそれほど多くなくても高収益を実現しやすい構造になります。

年収5,000万円・1億円という水準を語るとき、保険診療中心のモデルと自由診療中心のモデルでは、必要な患者数も経営リスクもまったく異なるという前提を押さえておく必要があるでしょう。

「年収激減」が起こる背景

「開業医 年収激減」と検索される背景には、開業当初は順調だった収益が、年数を経て落ち込むケースへの不安があると考えられます。主な要因としては、以下が挙げられます。

  • ●近隣に競合クリニックが新規開業し、患者が分散した
  • ●地域の高齢化・人口減少により、外来患者数そのものが減少した
  • ●院長の高齢化により、診療できる患者数(キャパシティ)が縮小した
  • ●医療機器の更新や税負担の増加により、経費率が上昇した

開業直後の収益水準がそのまま続くと考えるのではなく、地域の人口動態や競合状況の変化を見据えた中長期の経営計画を持っておくことが、年収の急激な落ち込みを防ぐ備えになります。

開業医に関するよくある質問

ここまで解説してきた内容を踏まえ、検索されることの多い疑問についてQ&A形式で補足します。

開業医は「儲けすぎ」と言われるのは本当ですか?

一部の開業医が高収入であることは事実ですが、前章までで見た通り、その水準には診療科・立地・自由診療の比重によって大きな幅があります。

「開業医=一律に儲けすぎ」という見方は、収益性の高い一部のクリニックのイメージが全体像として広まった結果と言えるでしょう。

医科診療所(法人)の赤字割合が約4割にのぼるという現実もあわせて理解しておくと、実態に近い見方ができます。

「開業医はやばい」「オワコン」と言われる理由は何ですか?

主な理由として、初期投資の大きさに対する不安、医師の働き方改革による労働環境の変化、診療所数の増加による競争激化が挙げられます。

ただし、廃業・休業の急増は収益性の悪化そのものよりも、経営者の高齢化・後継者不足という構造的な要因が主因です。

「儲からない」「オワコン」という言葉が広まる背景には、経営環境の変化に対する漠然とした不安が影響していると考えられます。

開業医の家族(妻・夫)はどのような役割を担うことが多いですか?

開業医のパートナーが、事務長や経理担当としてクリニック経営に関わるケースは少なくありません。

医療事務や労務管理、資金繰りの一部を担うことで、人件費を抑えながら経営体制を整える狙いがあります。

ただし、これは開業医個人の状況によって大きく異なり、パートナーが経営に関与しない形で開業するケースも一般的です。

自由診療と保険診療、収益面ではどちらが有利ですか?

一概にどちらが有利とは言えません。

保険診療は診療報酬点数によって単価が定められている分、患者数に応じた収益の予測がしやすい一方、自由診療は単価設定の自由度が高く、収益を大きく伸ばせる可能性がある反面、集客力や技術力によって収益が大きく変動します。

目指す年収水準に応じて、両者の比重をどう組み合わせるかを検討するのが現実的なアプローチです。

まとめ

開業医が儲かる仕組みは、診療報酬という土台の上に、集患力・自由診療の活用・診療科の特性・経営判断が積み重なって成り立っています。

厚生労働省のデータが示す通り、開業医の平均年収は勤務医を上回る水準にありますが、それは自動的に得られるものではなく、経営努力によって差が生まれる構造であることも事実です。

「儲かる」「儲からない」という言葉の裏には、収益性そのものの問題と、借入返済や経営負担による実感の乏しさという、異なる要因が混ざり合っています。廃業率の実態が示すように、収益の悪化よりも後継者不足が大きな課題であることも、開業医の実像を正しく捉えるうえで欠かせない視点です。

本記事で紹介したデータと構造を判断材料として、ご自身の診療科・地域特性に照らし合わせながら、開業という選択肢を検討してみてください。

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