開業医が儲からない5つの理由|年収激減を防ぐ経営戦略と診療科選び

開業医が儲からない5つの理由|年収激減を防ぐ経営戦略と診療科選び

開業医 儲からない」と検索窓に打ち込んだ夜、先生はどんな気持ちだったでしょうか。開業を具体的に検討し始めると、「本当にこの先やっていけるのか」という不安がふと頭をよぎる瞬間があります。SNSや医師専用の掲示板では「儲かる」「儲からない」の両方の声が飛び交い、どちらを信じればいいのか分からなくなることも少なくないはずです。

本記事では、開業医としての経営を検討している医師に向けて、以下の内容を順に解説します。

  • ●開業医は本当に儲からないのか、最新データで見る実態
  • ●開業医が儲からないと言われる5つの構造的な理由
  • ●儲かる開業医と儲からない開業医の違い
  • 年収激減を防ぐための具体的な経営戦略
  • ●儲かる診療科の選び方と診療科別の収益傾向

「儲からない」という言葉の裏にある構造を正しく理解できれば、漠然とした不安は具体的な対策へと変わります。先生ご自身の開業判断や経営改善の材料として、本記事をお役立てください。

開業医は本当に儲からないのか?年収激減の実態データ

結論から言うと、開業医の平均年収は依然として勤務医を上回っています。ただし、その差は年々縮小しており、「儲からない」という言葉が単なるイメージではなく、データに裏付けられた現実になりつつあるのも事実です。まずは、最新の統計から実態を確認していきましょう。

開業医と勤務医の年収比較

厚生労働省の調査によれば、勤務医(一般病院)の平均年収が約1,461万円であるのに対し、一般診療所院長(無床)の平均年収は約2,872万円と、依然として約2倍の差があることが示されています(令和6年度)。

出典:厚生労働省「第25回医療経済実態調査の結果に対する見解」(健康保険組合連合会・中医協総-5-1提出資料)
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001603473.pdf

数字だけを見れば、開業医が儲からないというのは誤解のようにも思えます。しかし、これは平均値であり、後述するとおり損益率の中央値は平均値を大幅に下回っています。「開業すれば平均並みに稼げる」という前提そのものが、実態とずれ始めているのです。

診療所の損益率が急落した最新データ

2025年11月に公表された第25回医療経済実態調査では、医療法人の一般診療所の損益率(平均値)は4.8%で、前年度の8.3%からほぼ半減しました。中央値に至っては5.6%から2.7%まで下落しています。

同じ調査で一般病院全体の損益率もマイナス7.3%の赤字となっており、病院・診療所を問わず、医療機関全体の収益環境が急速に厳しくなっていることがうかがえます。

さらに、同資料によれば赤字施設の割合は37.4%と4割近くに達しました。「平均値」だけを見て安心できる状況ではなく、多くの診療所が中央値以下、つまり平均を下回る利益率で経営している実態が見えてきます。

日本医師会が公表した緊急調査でも、本業の医業で赤字となった医療法人は45.2%にのぼり、前年度の31.3%から大きく増加しています。診療報酬の改定結果を見て、想定していた収支計画を見直さざるを得なくなった院長も少なくないはずです。

出典:日本医師会総合政策研究機構「令和7年診療所の緊急経営調査」(日医総研ワーキングペーパーNo.494)
https://www.jmari.med.or.jp/wp-content/uploads/2025/09/WP494.pdf

休廃業・解散が過去最多を更新している現実

こうした収益悪化は、廃業という形にも表れています。帝国データバンクの調査によれば、2025年に休業・廃業・解散した医療機関は823件となり、前年の723件を上回って過去最多を更新しました。

出典:株式会社帝国データバンク「医療機関の倒産・休廃業解散動向調査(2025年)」
https://www.tdb.co.jp/report/industry/20260123-iryoukikan2025/

最大の要因は経営者の高齢化です。診療所経営者のうち70歳以上が全体の56.7%を占めており、後継者不在のまま廃業に至るケースが増え続けています。

日医総研の調査でも、全国の診療所の約14%が「近い将来の廃業」を検討していると回答しており、収益の悪化と将来不安が同時に進行している状況がうかがえます。

「儲からない」という言葉は、決して誇張ではなく、統計として裏付けられた変化として現れ始めているのが現状です。次章では、その具体的な理由を5つに整理して見ていきます。

開業医が儲からない5つの理由

前章で見た数字の背景には、個々の経営努力だけでは埋めきれない構造的な要因が存在します。ここでは、開業医の収益が伸び悩む主な理由を5つに分けて整理していきましょう。

①診療報酬の実質的な引き下げ

前章で紹介した日医の緊急経営調査でも触れたとおり、診療報酬改定に伴うコスト増と収益減少の板挟みが、多くの診療所の経営を圧迫しています。診療報酬は公定価格であり、物価や人件費が上昇しても、収入側を医院の裁量で引き上げることはできません。

飲食店であれば値上げという選択肢がありますが、クリニックにその手段はほぼ存在しないのです。原材料費や光熱費が上がっても価格転嫁ができない構造そのものが、他業種にはない特有の難しさといえます。

改定のたびに収支計画の見直しを迫られ、想定していた投資回収のペースが崩れてしまう院長の姿は、多くの診療所に共通する景色でしょう。

②競合過多による患者の分散

厚生労働省の調査によれば、無床診療所の施設数は令和6年10月時点で9万9,792施設に達し、前年から539施設増加しました。病院の数が減少傾向にある一方、無床診療所は開設が続いており、地域によっては同じ診療科のクリニックが徒歩圏内に複数存在することも珍しくありません。

出典:厚生労働省「令和6(2024)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/24/dl/11gaikyou06.pdf

開業前に思い描いていた患者数を、開業後の競合状況によって下方修正せざるを得なくなるケースは少なくありません。診療圏調査を丁寧に行ったつもりでも、その後に近隣で同科の開業が相次いだら、想定していた集患数を維持できなくなることもあります。

特に、都市部の内科・皮膚科・美容関連など参入障壁が比較的低い診療科では、この傾向が顕著に表れやすい点にも注意が必要です。

③開業初期費用・固定費の高騰

国土交通省の建設工事費デフレーターによれば、2025年8月時点の指数は130.9となり、2015年度を基準とした10年間で約3割上昇しています。(本統計は毎月勤労統計調査の改定等に伴い過去分も遡及改定されるため、最新値は変動する可能性があります)

出典:国土交通省「建設工事費デフレーター新旧情報」
https://www.mlit.go.jp/statistics/details/t-other-2_tk_000253.html

建築費や医療機器の価格が上昇し続けているため、同じ規模のクリニックを開業する場合でも、数年前より多くの自己資金や借入が必要です。借入額が増えれば、毎月の返済負担も重くなり、開業直後の資金繰りを圧迫する要因になります。

人件費についても、最低賃金の引き上げや他業種との人材獲得競争の激化により、看護師・医療事務スタッフの採用コストは上昇傾向にあります。開業時に見積もった収支計画が、数年のうちに現実と乖離してしまうことも珍しくありません。

④経営知識不足によるどんぶり勘定

医師としての専門性と、経営者としてのスキルはまったく別の能力です。診療の質には自信があっても、原価管理や資金繰り、人件費率といった経営指標を把握できていないまま開業してしまうケースは少なくありません。

具体的には、以下のような状態に心当たりがある場合、注意が必要です。

  • ●毎月の損益をリアルタイムで把握できていない
  • ●人件費率や材料費率など、業界標準となる指標を知らない
  • ●資金繰りを税理士や会計士にすべて任せきりにしている

「儲かっている実感がないまま、なんとなく経営を続けている」という状態は、数字を定期的に確認できていないことに起因している場合がほとんどです。

月次の損益をタイムリーに把握し、異常値に早く気づける体制を整えているかどうかが、儲かる開業医とそうでない開業医を分ける分岐点になります。

⑤後継者不在による将来的な廃業リスク

前章で触れたとおり、診療所経営者の高齢化と後継者不在は年々深刻さを増しています。後継者が見つからないまま経営を続けた結果、事業として継続可能な状態であっても、承継先がないという理由だけで廃業に至るケースが増えているのです。

親族内承継にこだわらず、第三者承継やM&Aも選択肢に含めて早めに情報収集を始めておくかどうかが、将来的な廃業リスクを左右します。「儲からない」という言葉の背後には、日々の収益の問題だけでなく、こうした将来設計の遅れも複合的に絡んでいるのです。

以下に、5つの理由と対応の方向性を整理しました。

理由 影響 対応の方向性
①診療報酬の引き下げ 収入を裁量で上げられない 複数戦略の組み合わせ(次章)
②競合過多 想定患者数の下方修正 集患投資の継続(次章)
③開業コスト高騰 資金繰りの圧迫 固定費の定期棚卸し(次章)
④経営知識不足 収益悪化に気づけない 月次損益の把握
⑤後継者不在 将来的な廃業リスク 早期の第三者承継検討

前章の実態データと合わせて見ると、開業医の収益悪化は特定の失敗要因だけでなく、複数の構造的な変化が同時に進行していることが分かります。

次章では、こうした逆風のなかでも収益を確保できている開業医との違いを見ていきます。

儲かる開業医と儲からない開業医は何が違うのか

ここまで見てきた5つの理由は、開業医全体を取り巻く構造的な逆風です。しかし同じ環境の中でも、着実に収益を上げている開業医は存在します。両者を分けているのは、特別な才能や運ではなく、いくつかの具体的な視点の違いです。

明確な経営方針とコンセプトの有無

儲かる開業医の多くは、「誰に、どんな医療を、どのように提供するか」というコンセプトを明確に持っています。

診療方針が曖昧なまま開業すると、患者にとっての来院理由が伝わりにくく、価格競争や立地の優位性だけに頼らざるを得ません。逆に、専門性や診療スタイルが明確なクリニックは、多少通いにくい立地であっても、患者から選ばれ続ける傾向にあります。

開業を検討する段階で、「近隣に同科がないから」という消去法だけでコンセプトを決めてしまうと、後から差別化に苦労することにもなりかねません。

立地選定と集患力の差

開業前の診療圏調査を丁寧に行うことは前提として、儲かる開業医は開業後も集患への投資を継続しています。

Web広告やホームページの整備、口コミへの対応など、患者に選ばれるための情報発信を止めないことが、長期的な集患力の差につながります。開業直後は物珍しさもあって患者数が伸びやすいものですが、その勢いだけに頼り、数年後には広報活動をほとんど行わなくなってしまうケースは、儲からない開業医に共通しやすい傾向です。

競合が増え続ける環境では、集患は「開業時の一度きりの取り組み」ではなく、継続的な経営活動として位置づける必要があります。

数字を把握する仕組みの有無

最後に、経営を「感覚」ではなく「数字」で把握できているかどうかも大きな分かれ目です。前章で触れたどんぶり勘定の弊害は、開業直後の資金繰りが厳しい時期だけでなく、経営が軌道に乗った後も静かに収益力を蝕んでいきます。

比較項目 儲かる開業医 儲からない開業医
損益の把握 月次で確認し、異常値に早く気づく 決算時にまとめて確認する
集患活動 開業後も継続的に投資する 開業直後の勢いに依存する
専門家との関係 税理士等と定期的に相談する 依頼したきり、ほぼ任せきりにする

こうした違いは、才能や運によるものではなく、日々の習慣の積み重ねによって生まれるものです。

「儲からない」と感じている場合も、これらの視点を一つずつ見直していくことで、状況を変えられる余地は十分に残されています。次章では、こうした視点を踏まえた具体的な経営戦略を解説します。

年収激減を防ぐための経営戦略

これまでの内容を踏まえ、この章では「年収激減」という最悪のシナリオを避けるために、開業医が実際に取り組める経営戦略を4つの観点から整理します。いずれも、明日からでも着手できる具体的な取り組みです。

集患・マーケティングへの投資

集患は、開業時だけでなく開業後も継続的に取り組むべき経営活動です。以下のような施策を、単発ではなく継続的な仕組みとして組み込むことが重要となります。

  • ●Googleビジネスプロフィールの情報を定期的に更新する
  • ●診療内容や院内の様子が伝わるホームページを整備する
  • ●口コミへの丁寧な返信を通じて、信頼感を積み上げる
  • ●地域の他院・薬局との連携を通じて紹介患者を増やす

派手な広告費をかけなくても、患者にとっての「選ばれる理由」を発信し続けることが、集患力の底上げにつながります。

固定費・人件費の見直し

固定費の中でも、人件費と設備関連費は特に見直しの余地が大きい項目です。スタッフの配置が業務量に対して過剰になっていないか、リースしている機器の利用頻度は妥当かなど、定期的な棚卸しを行うことをおすすめします。

ただし、コスト削減は診療の質やスタッフの労働環境を犠牲にしてまで行うものではありません。削るべきコストと、投資として維持すべきコストを見極める視点が重要です。例えば、消耗品や外注業務の契約を1年以上見直していない場合、相見積もりを取るだけでもコストが下がる余地が見つかることがあります。

一方で、業務効率化のためのITツール導入など、短期的にはコストでも中長期的な収益改善につながる投資は、削減の対象から切り離して考える必要があります。

医療法人化と税務対策

個人事業として運営してきたクリニックが、収益の拡大に伴って医療法人化を検討するタイミングも、経営戦略上の重要な分岐点です。

医療法人化には、役員報酬の設定による税負担の平準化や、分院展開のしやすさといったメリットがある一方、社会保険への加入義務や事務負担の増加といった側面もあります。

法人化の是非は、収益規模や将来の展望によって最適な判断が異なるため、一律に「した方がよい」とは言い切れません。自院の収支状況を踏まえて、複数のシミュレーションを比較検討することが欠かせないでしょう。

専門家(税理士等)との連携

ここまで見てきた対策の多くは、院長一人だけで完結させるのが難しい領域でもあります。税理士や医業経営コンサルタントといった専門家と早い段階から連携し、月次での数字の確認や、中長期の経営計画の策定を一緒に進めていくことが、遠回りに見えて最も確実な対策になるのです。

複数の専門家から意見を得ることで、一人の担当者の判断に依存しすぎない体制を作れる点も見逃せないメリットです。

「経営のことは開業してから考えればいい」と先送りにせず、開業準備の段階から専門家に相談しておくことで、その後の経営判断のスピードと精度は大きく変わってきます。

以下に、4つの戦略の特徴を整理しました。

戦略 着手しやすさ 効果が出るまでの期間
集患・マーケティング投資 すぐ着手可能 中期(半年〜1年)
固定費・人件費の見直し すぐ着手可能 短期(数ヶ月)
医療法人化・税務対策 検討に時間を要する 中長期(1年以上)
専門家との連携 すぐ着手可能 継続的な効果

ここまでの戦略を実行に移す前提として、次章では自院に合った診療科の選び方について解説します。

儲かる診療科の選び方と診療科別の収益傾向

最後に、タイトルにも掲げた「診療科選び」について解説します。開業を検討する段階では、診療科によって収益構造や競合状況が大きく異なることを理解しておくことが欠かせません。

診療科による収益差の実態

標榜する診療科によって、患者単価や自由診療の比率、必要な設備投資の規模、そして投資回収にかかる期間は大きく異なるのが実情です。

同じ立地・同じ規模のクリニックであっても、扱う疾患や検査の種類によって収益力には差が生まれます。診療科の選択は、開業後の経営の土台を決める最初の意思決定であり、後から診療科を大きく変更することは現実的ではないため、慎重な検討が求められます。

開業しやすい診療科・儲かりやすい診療科の傾向

厚生労働省の調査によれば、一般診療所のうち内科を標榜する施設は6万4,747施設で、一般診療所総数の61.7%を占めています。

次いで小児科が16.9%、消化器内科(胃腸内科)が16.2%と続いており、特定の診療科に開業が集中している実態がうかがえます。

出典:厚生労働省「令和5(2023)年医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/23/dl/11gaikyo05.pdf

内科は患者ニーズの裾野が広く開業しやすい診療科である一方、施設数の多さはそのまま競合の多さを意味します。前章で触れた集患の難しさは、こうした診療科ごとの競合密度によっても大きく変わってくるのです。

施設数が比較的少ない診療科や、地域によって供給が不足している診療科は、開業後の集患において相対的に有利に働く可能性があります。

診療科選びで見落としがちな視点

診療科を選ぶ際、多くの医師は「自分の専門性」や「儲かるかどうか」という2つの軸で検討しがちです。しかし、それだけでは見落としがちな視点があります。

  • ●自分の専門性を活かせる診療科か
  • ●地域の患者ニーズと供給のバランスが取れているか
  • ●自由診療など、診療報酬に依存しない収益源を確保できるか
  • ●将来的な疾病構造の変化(高齢化・生活習慣病の増加等)に対応できるか

特に、自由診療を組み合わせられる診療科は、診療報酬の改定リスクを一定程度分散できるという意味で、経営の安定性という観点からも注目されています。

専門性だけでなく、こうした複数の視点を掛け合わせて診療科を検討することが、開業後の「儲からない」という状況を避けるための土台になります。

まとめ|儲かる経営は「知ること」から始まる

開業医が「儲からない」と言われる背景には、診療報酬の実質的な引き下げ、競合過多による患者の分散、開業コストの高騰、経営知識不足によるどんぶり勘定、後継者不在という5つの構造的な要因が重なっています。

しかし、同じ逆風のなかでも、明確な経営方針を持ち、数字を継続的に把握し、専門家と連携しながら経営を続けている開業医は、着実に収益を確保しています。

年収激減という最悪のシナリオは、日々の小さな経営判断の積み重ねによって避けられる可能性が十分にあります。診療科選びも含め、正解は一つではありません。

今回ご紹介した視点を一つずつ確認しながら、先生ご自身にとって納得のいく経営の形を見つけていっていただければ幸いです。

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