非薬物療法と自己管理
血圧が高いからと言って絶対に薬を飲まないといけないというわけではありません。血圧を様々な生活習慣などで改善できれば、薬を減らしたりやめたりすることも可能です。では、いったいどのようにすればいいのでしょうか。
おさらいですが、血圧を規定している因子は2つしかありません。血管の細さと血液量です。
ホースで水やりをするときのことを考えてください。遠くまで水を飛ばそうと思ったら、どのようにしたらいいでしょうか。そうですね。ホースの先を絞って勢いを増すか、蛇口をひねって水の量を増やすかの2択です。それ以外に遠くまで水を遠くに飛ばす方法は存在しません。
水を遠くまで飛ばすということは血圧が高いことの比喩です。つまり、ホースの水やりと血圧は同じ原理で動いているのです。ホースの先の細さが血管の細さに対応し、水の量が血液量に対応しています。
つまり、血管を拡張するか血液量を減らせば血圧を下げることができるのです。血圧を下げる方法はこの2パターンしかありません。これは、薬を用いて血圧を下げる時も同じです。高血圧の薬は大別すると、血管を広げるタイプの薬か血液量を減らすタイプの薬の2タイプしかないのです。
では、薬に頼らず血管を広げるか血液量を減らせばいいのです。
-血管を広げる
動脈硬化は血管を狭くします。血管が硬く狭くなるのが動脈硬化の主な現象なので当然ですね。動脈硬化の原因は皮肉なことに高血圧もあるわけですが、ほかにも動脈硬化をきたす様々な原因があります。
例えば、糖尿病は動脈硬化の大きな原因の一つです。糖尿病はもちろん薬だけではなく、糖質制限やダイエットなどの食事制限でも改善することができます。糖尿病が改善するだけで、動脈硬化の進展を抑えることができ、血圧の上昇も抑えることが可能です。
また、高脂血症(コレステロールが高い)も動脈硬化の原因です。コレステロールを揚げないような生活習慣や、適切な薬物療法を行うことで悪玉コレステロールを下げて動脈硬化を防げます。ひいては、血圧も下げることができます。
他には、喫煙です。たばこを吸うと血管が収縮します。またタバコを吸っていないときにも、たばこの中に含まれる様々な成分によって血管が硬くなっていきます。なので、禁煙することでも血圧を下げることが可能です。
有酸素運動も血管を広げる効果があります。ウォーキングのような有酸素運動は、動脈硬化に対して非常に有効で、それだけで健康全体を増進する働きもあります。ここで注意してほしいのが、筋トレのような運動は高血圧には逆効果ということです。もちろん、あまりにハードな筋トレでなければ、そこまで血圧に悪影響はありませんが、重量上げなどを行っている最中は最高血圧が200mmHgを超えることも普通にあり得るので、血圧が高い人は注意してください。
ジャンクフードをやめるのも非常に効果的です。ポテトチップスやホットスナックのような食物の中には、非常に質の悪い脂質が含まれているのでそれ自体が血管を硬くする作用を持っています。ベジタリアンのように野菜中心の生活にする必要はありませんが、3食自炊の料理を食べるほうが血圧にはとてもいいです。
-血液量
血液量を減らす最も効果的な方法はダイエットです。想像してみてください。100㎏の人と50㎏の人であれば、どちらの人のほうが血液量が多いでしょう。もちろん100㎏の人ですよね。
人間には適正体重というものがあります。大柄な人も小柄な人も、その人に適した体重が存在するのです。それは、身長×身長×22で算出できます。例えば身長170㎝の人であれば、63.5㎏というのが適正体重です。自分の臓器はこの体重あたりで一番うまく働くような大きさになっているわけです。
もし、この適正体重よりも体重が重い場合、自分が必要としている血液量よりも多い量を体の中に抱えていることになります。そう、すなわち適正な血圧よりも高い血圧になってしまうわけです。なので、適正体重よりも重い場合、ダイエットをするのが最も効果的な血圧を下げる方法です。
他にも、塩分量も問題があります。塩分が高い食事をとると、塩分を薄めようとして水分を血液内に取り込もうとします。血液の塩分濃度はかなり厳密に腎臓によってコントロールされているので、塩分過多になると確実に血液量が増えてしまいます。
もちろん、腎臓がきちんと機能していれば尿に余分な塩分を輩出することができますが、それも限界があります。腎臓自体の負担もさることながら、一過性にはどうしても血液量が増えてしまうからです。
今でこそ食が欧米化したとはいえ、日本に住んでいる場合日本食を中心に食生活が構成されているはずです。日本食は塩分量が多い食事として有名です。劣化した油まみれのジャンクフードという欧米食もよくはありませんが、日本食は塩分量が多いと思って食事をすることが大切です。
具体的には、うどんやラーメンのような汁物の汁は全部飲まない。醤油やソースなどの調味料は料理に入れて調理するのではなく、後漬けにして量を調節する。出汁などをふんだんに使い、食塩の使用量そのものを少なくするなどの工夫が必要です。
まとめ
上記のように、血管を拡張したり血液量を減らすような生活を心がければ、血圧の薬を飲まなくても血圧を下げることが可能です。もし、現在血圧の薬を飲んでいるのであれば、薬の量を減らしたり、最終的にはやめることも夢ではありません。
詳しい具体的な方法などは、医療スタッフにお気軽にご相談ください。
確認させていただき次第、当院からメールで連絡をさせていただきます。