高血圧を引き起こす原因とリスク

この記事を書いた人
坂口 海雲

大阪市立大学医学部を卒業後、大阪市立大学循環器内科に入局。ベルランド総合病院、大阪市立大学病院への勤務を経て、福島吉野スマイル内科・循環器内科を開院。Dr.AGAクリニックの総院長も就任中。

所属:日本内科学会日本循環器学会、医学博士(循環器内科)

高血圧を引き起こす原因とリスク

今や20歳以上の日本人の約2人に1人が高血圧だと言われています。
高血圧は血管を傷つけ血管の弾力性を失わせることで、重大な疾患を引き起こします。今回はそんな高血圧の原因や高血圧による怖いリスクについて解説していきます。

高血圧とは

そもそも「高血圧とはどのようなものなのか?」についてですが、高血圧は一般的に、収縮期血圧135mmHg以上または拡張期血圧85mmHg以上とされています。
ここで一つ注意していただきたいのが、一時的ではなく慢性的に長く基準値を超えている状態のことを指します。運動した時や緊張で一時的に血圧が基準値を超えてしまったとしても、それは診断上高血圧にはなりません。

-高血圧の種類

高血圧は大きく2つの種類に分かれます。

・本態性高血圧
・二次性高血圧

本態性高血圧は高血圧を引きおこす基礎疾患がないにも関わらず、高血圧となっている状態です。
一方の二次性高血圧は、何らかの基礎疾患により高血圧となっている状態です。代表的な疾患としてバセドウ病や原発性アルドステロン症、クッシング症候群が挙げられます。これらの疾患は、血圧を上昇させる様々なホルモンが過剰に分泌される疾患です。二次性高血圧を引き起こす基礎疾患では、こうしたホルモン関係の病気が多いとされます。他にも、腎臓の血管が狭くなる腎動脈狭窄症などもあります。
この2つの高血圧の種類の中で90%前後が基礎疾患のない本態性高血圧だと言われています。今回は、そんな本態性高血圧を引き起こす要因をいくつか紹介していきます。

-本態性高血圧の原因

本態性高血圧の原因は大きく分けて以下の4つです。

・不健康な生活習慣 ・遺伝的要因 ・日々のストレスや疲れ ・環境的要因

順番に解説していきます。

不健康な生活習慣とは、運動不足や肥満になるような食生活を指します。不健康な生活習慣による肥満は高血圧の原因になると言われ、特に塩分は血圧を上げる大きな要因となるので塩分の過剰摂取には注意が必要です。近年、食生活の欧米化が進んでおり、塩分の過剰摂取や肥満になりやすい傾向にあります。ジャンクフードなどカロリーと塩分がともに高いものばかり摂取するのではなく、栄養バランスのいい食事を心がけましょう。

2つ目の遺伝的要因ですが、高血圧は遺伝するとも言われています。家族に高血圧と診断された方がいる場合は、日々の習慣に遺伝的要因が重なってくるので、より血圧に関して注意が必要になってきます。

3つ目の日々の疲れやストレスについてですが、こうした精神的疲労が蓄積されることでも高血圧を招きます。なにかと忙しい現代社会では、長時間労働や人間関係などで疲れやストレスを貯めがちです。こうしたものの蓄積により精神面に影響を与え、高血圧に至ってしまうケースもあります。

最後の環境的な要因についてですが、代表的なのが寒さです。寒いと血管は収縮してしまうので、血圧は上がる傾向にあります。寒さ以外の環境的要因として、騒音や大気汚染など様々な因子が血圧に影響を与えると言われています。

このように高血圧は様々な要因によって引きこされます。高血圧という疾患は「高齢者の病気」というイメージがありますが、若年者でも十分起こりえます。そのため、若いうちから生活習慣に気を付け適度にストレスを発散させ、健康を維持するよう心掛けることが大切です。
それぞれの高血圧の原因に対するメカニズムは別のコラムで紹介しているので、詳細な内容を知りたい方は是非チェックしてみてください。


-高血圧によるリスク

では、血圧が高くなると人間の身体にとってどのような影響があるのでしょうか?

冒頭でも触れましたが、高血圧は血管の弾力性を失わせる原因になります。
この血管の弾力性の喪失は、動脈硬化を進行させ血管を破裂させることで出血リスクを上げてしまいます。動脈硬化は心筋梗塞や脳卒中といった生命に関わるような重大な疾患を引き起こす可能性もあります。こうした疾患は、一命を取り留めたとしても何らかの後遺症が残る可能性があり、治療後の生活に大きな影響を与えかねません。こうした大きな疾患を発症させないためにも、早期に治療していくことが大切です。

-高血圧の初期症状

早めに受診し高血圧の治療を開始するために、どのような初期症状があるのか気になりますよね。
しかし、高血圧の初期症状はほとんどありません。肩こりや頭痛、めまいなどの症状が出るのは200mmHgを超えるような高血圧ですし、それらを自覚する頃には高血圧自体はかなり進行していることが多いです。このような病態から、定期的に血圧測定でもしていない限り、初期からの治療はかなりハードルが高いと言えるでしょう。会社の健康診断で高血圧が判明した場合は軽視せず、早めに受診し治療を開始することが大切です。

-低血圧も恐ろしい

これまで血圧が高いことに対して、注意喚起してきましたが、血圧が低い「低血圧」の状態の方が健康的なのでしょうか?

実は、そんなことはなく低血圧も健康にとってはよくありません。低血圧の自覚症状として、めまいや倦怠感があり症状が重い方だと生活に支障を来してしまう場合があります。血圧が極度に低い場合、臓器に十分な血液が遅れずショック状態となり、生命を脅かされかねません。 血圧は低過ぎず、高過ぎず正常範囲内で推移させることが長生きの秘訣です。


まとめ

高血圧は若年者から高齢者まで、幅広い世代で発症する疾患です。原因の中には、自分でコントロールできるものとそうでないものがあります。まずは、自分の意志で改善できる生活習慣から見直すことが治療や予防の第一歩になります。それでも改善しない場合は、一人で考えすぎずクリニックの医師などにご相談ください。