ストレスと高血圧

ストレスと高血圧

-血圧が上昇する原因は2つだけ

ホースで水やりをするときのことを想像してください。遠くまで水を飛ばそうと思ったらどうしますか。方法は2つしかないと思います。ホースの先っぽをつまんで細くするか、蛇口をひねって水をたくさん出すかの2つです。

何の話かというと、これは血圧の例え話なのです。血圧が高いというのは、水が遠く飛ぶことと同じです。ホースの先っぽをつまんで細くすることは、血管が細くなることです。蛇口をひねって水を出すことは、血液量が増えることなのです。

つまり、血圧が高くなる原因は2つしかありません。血管が細くなることと、血液量が増えることの2つです。実はこれ以外の原因は存在しないのです。

-どうしてストレスで血圧が上昇するの?

ここで、ストレスで血圧が高くなる原因は何でしょう。ストレスがかかったからといって、血液量が増えるわけではありません。そう、血管が細くなるのです。その理由を説明します。

ストレスは大きく分けて、身体的ストレスと精神的ストレスの2つがあります。身体的ストレスは、痛み、睡眠不足、深酒や二日酔い、ほかの疾患に伴う症状など多岐にわたります。精神的ストレスは、嫌な上司や夫婦喧嘩、プレッシャー、不安感などこちらも様々なものがあります。

どちらのストレスも交感神経という自律神経を刺激して血圧を高めます。自律神経には交感神経と副交感神経という2種類があります。
わかりやすく言うと、交感神経は戦うときに活発になり、副交感神経はリラックスするときに活発になる特徴があります。

例えば、あなたがサバンナでライオンに追いかけられているところを想像してください。この時、交感神経はとても活性化します。ライオンという恐怖による精神的ストレス。走って逃げるという身体的ストレスもマックスです。

交感神経が活発になっているので、血管は収縮します。もし、血管が収縮しなければ、ライオンにかみつかれたときやケガしたときに、大量の出血をきたしてしまいます。そして、血圧を高くします。リラックスしているときのように血圧が低いままだったら、走って逃げることなど不可能だからです。

-現代社会でのストレス

ある意味、サバンナでライオンに追いかけられて血圧が上がるのは正常な反応です。しかし、現代日本社会に生きている我々にとって、大草原でライオンに追いかけられるという可能性はほとんど考えられません。

しかし、現代日本社会はストレス社会でもあります。つまらない仕事で夜遅くまで残業させられて、寝不足だし、イライラする。夫が遅くまで帰ってこないから、ワンオペ育児で寝不足だし、イライラする。こんなことは日常茶飯事です。

ライオンから逃げるためには血圧を上げないといけないかもしれませんが、残業をしたりワンオペ育児をしたりすることは、本来は血圧を上昇させなくても済む作業です。出血する危険性もなければ、全力疾走を続けるような仕事でもないからです。

でも、人間の自律神経はそれらを区別することができません。現代社会でさまざまに降りかかってくるストレスも、旧石器時代にサバンナで人類が経験したであろうストレスも、自律神経には同じくストレスなのです。なので、ストレスのせいで血圧が上昇してしまいます。


-自律神経の嵐を抑えるための薬

はたして、我々にはなすすべがないのでしょうか。そんなことはありません。解決方法は2つあります。まずは、ストレスのせいで血圧が高くなっているような人によく効く血圧の薬を服用する。そして、もう一つはストレスそのものを軽減することです。

全員に同じように効き目を発揮する血圧の薬というものは存在しません。ストレスがきついせいで血圧が上がってしまっているような人は、自律神経が過緊張状態にあるわけです。そんな人がどれだけ高圧利尿薬(血液の量を少なくする薬)を服用しても血圧が下がることはありません。むしろ、自律神経過敏を押さえてあげるようなβブロッカーやαブロッカーなどの薬がよく効きます。

本当にストレスが強い人に、このタイプの薬を処方すると劇的に効果を発揮します。高圧利尿薬を通常容量の4倍処方しても効かないのに、αブロッカーなら通常容量の半分で大変効果を発揮する。そういう言ことがよくあるのです。

実は、ここが血圧を専門とする内科医の腕の見せ所でもあるのです。全員に同じような効果がある血圧の薬がもし存在すれば、全員にそれを処方すればいいだけの話です。全く頭を使いません。しかし、現実はそうではありません。血圧が高くなっている原因は人それぞれで、一人ずつ違います。その原因を解きほぐし、最適な薬を選択する。これが、内科医の腕の本質なのです。

-ストレスそのものに立ち向かう

さて、そうは言っても薬を永遠に飲み続けないといけないというのはいただけません。薬なんて、人間にとっては異物でしかないのですから、飲まないに越したことはないのです。では、どうすればいいのでしょう。ストレスそのものを減らせるのなら、とっくの昔に皆さんやっているはずです。

ここで、注目していただきたいのは、ストレスには2種類あるということです。身体的ストレスと精神的ストレスです。どちらのストレスを軽減させるのが簡単かというと、身体的ストレスです。

精神的ストレスは、軽減するのが難しいストレスです。精神というのはまず目に見えませんし、いやな上司を亡き者にするというのは現実的に不可能です。それに比べ、身体的ストレスは目で見たり観察することができます。

例えば、身体的ストレスの一番の原因、寝不足について考えてみましょう。1日に必要な睡眠時間は大体7時間程度です。もちろん、ナポレオンみたいに3時間でもOKという人もいますが、大体その程度です。徹夜明けで作業を行うのは、飲酒しながら作業を行うよりも効率が悪いという研究結果すらあるぐらい、寝不足は大きなストレスなのです。



精神的ストレスと違って、寝不足は感じることもできますし、睡眠時間を観測することもできます。ほかにも、虫歯が存在するとか怪我をしている、飲酒量が多すぎるとかタバコを吸いすぎている、スマホゲームをしすぎで眼精疲労がヤバイなど、身体的ストレスは直接的に見つけることが可能です。

まずは、そういった身体的ストレスを改善していくことに努めましょう。といっても、そこまで難しいことではなく、深酒をしないとか、スマホゲームをやめて早めに寝るとか、虫歯を歯医者で治療するといったごく当たり前のことです。

不思議なもので、身体的なストレスを軽減させると精神的なストレスも減っていきます。例えば嫌な上司の小言も、身体的に疲れていない状態であれば笑って無視できるのですが、疲れているときは無性に腹が立ったりします。身体と精神は別物ではなく、実はあらゆる面でつながっているのです。

だから、まずは改善する方法を見つけやすい身体的ストレスからアプローチするのが、回り道のように見えて最短経路なのです。




まとめ

旧石器時代と違い、交感神経をマックスまで活性化させないといけないような生命の危機というのは、現代社会ではほぼ存在しません。ただ、自律神経は旧石器時代から全く同じで進化していません。まずは目に見える身体的ストレスから改善し、血圧を下げていきましょう。

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