高血圧と高齢者
高齢になると高血圧症になる確率が増えます。それは、血管が年齢とともに硬くなってくるからです。逆に下の血圧は下がってきます。なので、上の血圧が高くなって下の血圧が下がってきます。上下の血圧差(脈圧と呼びます)が上昇してくる傾向にあります。
高齢者特有の血圧に対して注意しないといけないことがいくつかありますので、順番に説明していこうと思います。
-高齢者の場合命にかかわることがある
高血圧合併症の脳梗塞や脳出血、心筋梗塞などはそれ自体重大な症状を引き起こしますが、高齢者の場合特に命にかかわることがあります。長年の高血圧で動脈硬化が進行し、大きな血管までかなり脆くなっていることがあります。小さな血管であれば、脳梗塞や脳出血は命にはかかわりませんが、大血管でそれらが起こると大ごとです。高齢者の場合、このような大血管で梗塞や出血が起こる確率が若年者より大幅に高いです。
-食事運動療法が難しい
高齢の人は基礎代謝が少なくなっているので、ダイエットが若年者よりも難しいです。同じ食事をしていても、高齢者の場合太ってしまうこともあります。また、高齢の場合あまりに栄養を少なくし過ぎると、それ自体が大腿骨骨折などのリスクにつながりますので、食事制限もコントロールが難しいです。
また、運動療法に関しても若年層よりも難しい傾向にあります。高血圧に対する運動療法は有酸素運動が最も効果的なのですが、若年者では簡単にできるようなジョギングやウォーキングでも、高齢者の場合難しいことがあります。必然的に、実行可能な有酸素運動が制限されるため、なかなか運動療法を効果的に実施することができないです。
-薬物調節が難しい
高齢者は高血圧以外にも様々な病気を併存していることが多いです。薬の量自体が多くなると、服薬コンプライアンスがそれだけで低下しますし、薬物相互作用のため一緒に飲むことができない薬もたくさん存在します。
また、特に小柄な女性の高齢者の場合ですが、薬物を出し過ぎてしまうことがあります。通常用量を出していても、体重が少ないため効きすぎてしまうのです。それに薬物相互作用などが相まって、余計に薬物量の調整が困難になります。
-血圧を下げ過ぎるのは危険
高齢者で特に問題となるのは、血圧が低すぎることです。上の血圧が100mmHgを切るような場合、若年者ですらめまいやふらつきを覚えます。高齢者の場合は、これに加えて転倒のリスクがあります。転倒したら最悪の場合骨折して寝たきりになってしまいます。
一番有名なのは、大腿骨頸部骨折の5年生存率は進行胃癌とほぼ同じという事実です。そう、高齢者にとって骨折するというのは癌になるのと同じぐらい悪い病気なのです。せっかく血圧を下げても、骨折して命に係わるけがをしたのでは何をしているのか意味が分かりません。
しかし、高齢者の場合は降圧薬の有効血中濃度が狭く安定しないことも多いので、薬物調節が難しいです。転倒のリスクを負うぐらいであれば、ある程度血圧が高くても目をつぶることもあるぐらいです。
-認知症を誘発することも
血圧の下げ過ぎでもう一つ問題となるのが、認知症を誘発することもあるということです。脳は常に新鮮な血液を必要としています。そして、低血圧の影響が一番大きな臓器でもあります。なぜなら、最も上に存在するため重力の影響をもろに受けるからです。
低血圧状態が続くと、脳に必要な血液が供給されません。そうすると、脳に存在するグリア細胞から老廃物をうまく輩出することができなくなり、脳にゴミがたまっていきます。年余にわたってゴミがたまると、アルツハイマー病のような認知症を発症しやすくなるといわれています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。高齢者特有の高血圧治療の難しさを分かっていただけたでしょうか。高血圧治療の基本は毎日の血圧測定です。高齢者の場合、夜に血圧が低下している可能性もあるので、朝と夜2回血圧を測定できれば満点です。血圧のムラを発見できるかもしれません。
うまく血圧をコントロールできない高齢の方、またはそのご家族はどうぞお気軽の当院へご相談ください。
確認させていただき次第、当院からメールで連絡をさせていただきます。