咳喘息と気管支喘息の違いとは?症状の特徴と見分け方を詳しく解説

「息がゼーゼーする喘息とは違うの?」「長引く咳、ほんとに喘息なの?」このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?前回は咳喘息の基本的な仕組みについて解説しましたが、今回は「咳喘息」と「気管支喘息」の違いについて、詳しく説明していきます。

実は、咳喘息は気管支喘息の一種なのですが、症状の現れ方が大きく異なります。なぜ同じ喘息なのに症状が違うのか、どのように見分けるのか、その理由と特徴を分かりやすく解説していきます。気になる症状がある方は、ぜひ最後までご覧ください。

この記事を書いた人
坂口 海雲

大阪市立大学医学部を卒業後、大阪市立大学循環器内科に入局。ベルランド総合病院、大阪市立大学病院への勤務を経て、福島吉野スマイル内科・循環器内科を開院。Dr.AGAクリニックの総院長も就任中。

所属:日本内科学会日本循環器学会、医学博士(循環器内科)

1. 咳喘息と気管支喘息:どう違うの?

多くの方が「喘息」と聞くと、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音とともに息が苦しくなる病気をイメージするのではないでしょうか。これが一般的な「気管支喘息」の特徴です。しかし、咳喘息の場合は「咳のみ」が主な症状となります。息切れやゼーゼーという音はほとんど聞こえません。なぜ、同じ喘息なのに症状が違うのでしょうか?

【症状の違い】

  • 気管支喘息
    • ゼーゼー、ヒューヒューという音がする
    • 息苦しさを感じる
    • 咳も出る
  • 咳喘息
    • からからとした咳だけが続く
    • ゼーゼーという音はほとんどしない
    • 息苦しさもあまり感じない

この違いは、実は炎症が起きる場所の違いによって生じています。では次に、なぜこのような違いが出るのか、体の中での仕組みを見ていきましょう。

2. 症状が違う理由:炎症が起きる場所の違い

気道は、私たちが呼吸をする時に使う「空気の通り道」です。この通り道のどの部分に炎症が起きるかによって、症状が大きく変わってきます。

【気管支喘息の場合】

  • 気道の奥まで広い範囲で炎症が起きる
  • 気道が狭くなり、空気の通りが悪くなる
  • そのため、ゼーゼーという音や息苦しさが出る

【咳喘息の場合】

  • 気道の入り口付近に炎症が集中している
  • 気道はそれほど狭くならない
  • そのため、咳は出るものの息苦しさは少ない

分かりやすく例えると

  • 気管支喘息:長い水道ホースが全体的につぶれかけている状態
  • 咳喘息:ホースの入り口だけが少し傷んでいる状態

このように、炎症が起きる場所が違うことで、現れる症状も変わってくるのです。

3. それぞれの症状を詳しく比べてみよう

それでは、咳喘息と気管支喘息の症状の違いを、もう少し具体的に見ていきましょう。まず、咳喘息の最大の特徴は、からからとした乾いた咳が続くことです。痰はほとんど出ませんが、夜間に特に悪化する傾向があります。また、3週間以上症状が続くことも特徴的です。

咳喘息の診断基準は8週間以上続くことと定義されています。 一方、気管支喘息の場合は、ゼーゼーという音とともに咳が出ます。痰が出ることもあり、特に運動時に症状が悪化しやすい傾向があります。発作的に症状が出るのも特徴です。

【主な症状の違い】

  • 咳喘息
    • 乾いた咳のみが主症状
    • 夜間に悪化
    • 息苦しさは少ない
  • 気管支喘息
    • ゼーゼーという音
    • 息苦しさがある
    • 発作的な症状

このように、症状の現れ方に明確な違いがあります。では、それぞれの病気では、どんな時に症状が悪化しやすいのでしょうか。

4. どんな時に症状が出やすいの?

咳喘息と気管支喘息では、症状が悪化するきっかけも異なります。それぞれの特徴を理解することで、自分の症状がどちらに近いのか判断の手がかりになるので覚えておきましょう。咳喘息の方は、気道の入り口付近が敏感になっているため、主に環境の変化で症状が悪化します。

特に夜間から明け方にかけて咳が多くなるのが特徴です。寒い空気を吸い込んだ時や、空気が乾燥している時にも咳が出やすくなります。 一方、気管支喘息の方は、気道全体に炎症が起きているため、より広い範囲で反応が起こります。特に運動時や、アレルギー物質との接触で症状が悪化しやすいのが特徴です。

【症状が悪化するタイミング】

  • 咳喘息
    • 夜間~明け方
    • 寒い空気を吸った時
    • エアコンの風に当たった時
  • 気管支喘息
    • 運動中や運動直後
    • ハウスダストとの接触
    • 風邪をひいた時

これらの違いは、治療法の選択にも関係してきます。そのため、症状の特徴をしっかり医師に伝えることが適切な治療につながります。

5. 診断と治療:それぞれどう違う?

では、咳喘息と気管支喘息は、どのように診断され治療されるのでしょうか。

【診断の進め方】

まず、医師は詳しく症状をお聞きします。咳の特徴、いつ症状が出やすいか、どんな時に悪化するかなど、できるだけ具体的に伝えることが大切です。その後、必要に応じて検査を行います。 ・咳喘息の場合 喘息の特徴である「気道の過敏性」を調べる検査を行います。また、他の病気の可能性を除外するため、レントゲン検査なども行うことがあります。 ・気管支喘息の場合 呼吸機能検査や気道可逆性試験など、より詳しい肺の検査を行います。アレルギー検査を組み合わせることも多いです。

【治療方法の特徴】

診断が確定すると、それぞれの症状に合わせた治療が始まります。咳喘息の治療は、まずは咳を抑える薬から開始することが多いです。症状が落ち着かない場合は、気管支喘息と同じような吸入薬を使用することもあります。

一方、気管支喘息の治療は、発作を予防する吸入薬が中心となります。症状の程度に応じて、複数の種類の薬を組み合わせることもあります。しかし、どちらの場合も、早めの受診と適切な治療が大切です。特に以下のような場合は、すぐに医師に相談しましょう。

  • 症状が3週間以上続く
  • 夜間の症状で睡眠が取れない
  • 市販薬が効かない

まとめ:咳喘息と気管支喘息の違いを理解しよう

ここまで、咳喘息と気管支喘息の違いについて詳しく見てきました。最後に重要なポイントをまとめておきましょう。

【主な違いのポイント】

  • 咳喘息
    • からからとした咳だけが主な症状
    • 夜間に悪化しやすい
    • 気道の入り口付近の炎症が原因
  • 気管支喘息
    • ゼーゼーという音や息苦しさがある
    • 運動時に悪化しやすい
    • 気道全体の炎症が原因

【受診のタイミング】 

次のような症状がある場合は、医師による診断が必要です。

  • 週間以上咳が続く
  • 夜間の咳がひどく、眠れない
  • 市販薬を使っても改善しない

大切なのは、どちらの病気であっても、早めに適切な治療を受けることです。気になる症状がある方は、ためらわずに医師に相談してください。
次回は、咳喘息の診断方法について、より詳しく解説します。どのような検査が行われるのか、医師は何を確認するのかなど、診察の流れについてご紹介しますので、ぜひご覧ください。

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