遺伝と高血圧
高血圧は遺伝するのか。気になるところだと思います。結論から言いますと、残念ながら遺伝します。しかし、親や兄弟が高血圧だからと言って、あなたが必ず高血圧になるというわけではありません。
そして、親が高血圧でないからと言ってあなたが高血圧にならないとは限らないのです。
-血液型のようには遺伝しない
100%遺伝するものとしてABO式血液型があります。O型同士の親からは、絶対にO型の子供しか生まれません。狭い意味での遺伝形式(メンデル遺伝)の発想からすると、親が高血圧症だったら、子どもも絶対高血圧症になるんじゃないか。そう思ってしまっても不思議ではありません。
しかし、現実はそうではありません。ABO型血液型は非常に少ない遺伝子によって、血液型が決定されています。高血圧に関しては、何百という遺伝子によって血圧が決定されています。ここが血液型と全く違うところです。一つ一つの遺伝子は、血液型と同じように遺伝するのですが、全体の遺伝子で高血圧になるかどうかが決定するので、話が複雑になるのです。
-1つの遺伝子では決定しない
もう少し詳しく説明すると、血管の硬さを決定している遺伝子ですら、今わかっているだけで10種類以上あります。つまり、それだけ血管の硬さを決定しるバリエーションが多いのです。ちなみに、血管が硬いと高血圧になりやすくなります。
10種類以上の遺伝子全部が、血管が硬い遺伝子の人はいません(確率が低すぎます)。ある遺伝子は血管軟らか遺伝子、ある遺伝子は血管硬め遺伝子という風に多様性を持っているのです。
だから、血管の硬さの素因にしても、硬め100%の人から0%の人まで様々な人が分布することになります。血液型のように、A型はA型で、絶対にO型ではない。というような感じではありません。それはなぜかというと、血管の硬さというような一つの要素(表現型と呼ぶこともあります)ですら、複数の遺伝子の組み合わせで決定しているからです。
-遺伝子は様々なものがある
先ほどは、血管の硬さといった要素がどのように遺伝で決まっているのかをお話ししました。しかし、遺伝子は様々なものが存在しています。例えば、血管へのごみの付きやすさ、塩辛いものが好きかどうか、適正体重の重さ、そもそもの老化スピードなど、それらに影響を及ぼしている遺伝子が多数あるのです。
人間には遺伝子が数万存在していて、まだ機能が不明な遺伝子もたくさんあります。高血圧になるかどうかの遺伝子はおそらく数百個単位で存在しているはずですが、まだほんの一部しかわかっていないのが現状です。
しかし、想像を巡らせることはできます。仮に数百個の遺伝子が高血圧になるかどうかに関係していて、親から遺伝的に受け継ぐとします。親が高血圧だとしたら、高血圧を引き起こしやすい遺伝子を高血圧ではない人に比べ多く持っているはずです。なので、確立としては高血圧になりやすいということになります。
ただ、それはABO式血液型のように、完全に高血圧になるかどうかを予想するものではありません。グレーな部分が多すぎて、遺伝のみで高血圧になるかどうかを予想することが不可能なのです。
-遺伝以外の環境も関係している
当然の話ですが、高血圧になるかどうかは遺伝だけで決まっているわけではありません。むしろ、環境が影響している度合いのほうが多いといってもいいでしょう。
つまり、本来高血圧になりにくい遺伝子をもって生まれた人であっても、毎日外食で生活習慣も不規則で悪く、とても太っていたら、高血圧になってしまうと思われます。逆に、高血圧になりやすい遺伝子を持った人であっても、規則正しい生活習慣をしていれば高血圧になることはほとんどないかもしれません。
現在の医学では、遺伝子をすべてスクリーニングするというのは現実的ではないですし、先ほど述べた通り働きが不明な遺伝子が多い中で、高血圧になりやすいかどうか遺伝スクリーニングすることは不可能だと思われます。なので、親が高血圧だからと言って、はたして高血圧になりやすい遺伝子を親が持っているかどうかはわからないのです。もしかしたら、生活習慣が悪いせいで高血圧になっているかもしれないわけですから。
まとめ
高血圧は遺伝するか、という質問に率直に答えると、遺伝しますという答えになります。しかし、血液型のように100%遺伝するわけでもありませんし、親が高血圧になりやすい遺伝子を持っているかも正確に知ることはできません。また、遺伝だけで高血圧になるかどうかは決まっておらず、環境の影響も大きいです。
親が高血圧だからとあきらめず、もしくは、親は高血圧ではないからと安心せず、生活環境を整える努力をすることが大事だと思います。どのような生活環境にすればよいのかは、担当のクリニックの医師にお気軽にご相談ください。
確認させていただき次第、当院からメールで連絡をさせていただきます。