生活習慣と高血圧

この記事を書いた人
坂口 海雲

大阪市立大学医学部を卒業後、大阪市立大学循環器内科に入局。ベルランド総合病院、大阪市立大学病院への勤務を経て、福島吉野スマイル内科・循環器内科を開院。Dr.AGAクリニックの総院長も就任中。

所属:日本内科学会日本循環器学会、医学博士(循環器内科)

生活習慣と高血圧

高血圧症は生活習慣病ともいわれています。なので、悪い生活習慣は血圧を高くするということは間違いありません。では、具体的にはどのような生活習慣が高血圧を悪くするのでしょうか。
具体的には、質の悪い食事、運動不足、不規則な生活習慣、過度のストレス、喫煙が挙げられます。順番に見ていきましょう。


-質の悪い食事

毎日コンビニ弁当、外食だという人は少ないかもしれませんが、こういう食生活はよくないです。もちろん、仕事が忙しくて仕方がないということも理解できます。しかし、高血圧という視点から考えると、あまりいい食生活とは言いにくいです。
なぜかというと、コンビニ弁当や外食には食塩が多く含まれているからです。食塩を多くとると、体の血液量が増えます(食塩を薄めようとする働きがあるからです)。体の血液量が増えると、血圧が上がります。コンビニ弁当や外食だけではなく、そもそも日本人は海外の国に比べたら、食塩を取りすぎています。日本食が濃い味なので仕方ないかもしれませんが、食塩は取りすぎないようにしましょう。これは、自炊している人にも言えることです。ドバドバ醤油をかけたり、濃い味の味噌汁をガブガブ飲んだりしていれば、3食自炊の人でも血圧は上がってしまいます。

脂っこい食事や食事の量がそもそも多いことも問題です。脂っこい食事の中には、血管を傷つける酸化脂肪酸がたくさん含まれています。血管が傷つけられると、血管は自分自身を守ろうとして固くなります。これが、聞いたことがあるかもしれませんが、動脈硬化という現象です。
血管が固くなると血圧が上昇します。また、血圧が上がると血管が固くなります。いったん負のスパイラルに落ち込むと、どんどん状態が悪化してしまうのです。なので、どんどん血圧が高くなってしまう前に、血管が傷つけられる原因を無くす必要があるのです。

また、食事量そのものが多いのも問題です。どれだけ栄養素に優れた食事をとっていても、食べ過ぎていたら太ってしまいます。太ったら、そのまま血液量が増えます。先ほども言った通り、血液量が増えると血圧が上がるので、太っていることそのものが高血圧の原因となるのです。
だから、毎日塩辛くて脂っこい外食を食べ過ぎて太っているような食生活は最悪なのです。

-運動不足

運動不足になると、血液循環が妨げられます。血液というのは、循環していることによってうまくいくように作られています。もし、血液が流れることをやめてしまったら、そこで固まってしまいます。血液は流れていたら液体だけれども、止まったら固まるという性質があるからです。けがをしたとき、かさぶたができますよね。実は、これは血液のこの性質のためなんです。
なので、血液は常に流れ良く循環していないといけないわけです。しかし、運動不足になるとこの血液循環にとって、とても悪影響を及ぼします。1時間全く足を動かさずにデスクワークをしているだけで、血液循環は大幅に阻害されます。特に足の血液循環は大事で、第2の心臓と呼ばれているぐらいなのです。

まずは歩くことから始めるべきです。そもそも現代人は運動不足です。必要とされている運動量の半分も満たしていない人がほとんどです。実際に歩いてみればわかりますが、1日1万歩というのは結構厳しい目標です。しかし、1万歩でも健康を維持する許容最低限の量なのです。

筋トレは確かに運動ではありますが、少し気を付けなければいけません。なぜかというと、筋トレをしている最中はとても血圧が上昇してしまうからです。例えば、重たいバーベルを上げている状態で血圧を測ったら、最高血圧は場合によっては240mmHgというようなとんでもない値になっていることもあります。
あまりにも力まないといけないような筋トレは、血圧に対しては悪影響をもたらします。運動もやりすぎはよくありません。疲れ果ててへとへとになるような運動は逆効果です。エレベーターじゃなくて階段を使う。車ではなくて徒歩と電車で移動する。まずはこのような運動習慣から始めてみましょう。




-不規則な生活習慣

毎日深夜までYoutubeなどを見て寝不足になっている。夜遅くに食事をしたり、逆に朝早く起きすぎているなど、不規則な生活習慣は血圧の大敵です。もちろん、深夜のシフトなどの仕事のために仕方なく不規則な生活になっている場合もあるでしょう。しかし、大規模な研究の結果、深夜のシフトがある人のほうがない人に比べて血圧が高いということもわかっているのです。

規則正しい生活というのは、健康の基本です。何も早寝早起きをしろと言っているわけではありません。毎日のリズムを一定に保つのがいいという意味です。つまり、夜型の人は夜型の生活リズムを、朝型の人は朝型の生活リズムを常に保つということです。これも研究結果ですが、夜型の人が無理に朝型の生活リズムにすると、逆に健康を害するということがわかっています。
昨日は徹夜、今日は遅くまで寝て、次の日は朝早くから仕事というような、不規則な生活習慣が一番血圧によくないのです。人間には概日リズムという、体内時計が備わっています。このように不規則な生活をすると、体内時計がめちゃくちゃになって、常に時差ボケをしている状態になります。そうすると、血圧をコントロールする自律神経系統にも悪影響を及ぼして、高血圧になってしまうのです。

SNSや無料の動画は楽しいものですが、子どものテレビゲームではないですが、時間を決めてやるようにしましょう。

-過度のストレス

上司や怖い人に怒られたら、それだけで心臓がキューっとした感じがしますよね。これは、血圧が上がっている証拠です。自律神経が過緊張になって、血圧が上昇するのです。適度なストレス(集中した作業や軽い運動など)は血圧にいい効果をもたらしますが、過度なストレスは高血圧になる原因となります。
ストレスは精神的なものだけではありません。肉体的なストレスも、立派なストレスになります。例えば先ほど挙げた、睡眠不足や血管を傷つける食事などは肉体的なストレスです。ほかにも、寒すぎる環境や慢性的な便秘、肩こりや頭痛なども肉体的なストレスになります。

よくある勘違いとして、血圧が高いから頭痛がしますというのがあります。もちろん血圧が240mmHgのように、とても高ければ頭痛がすることもありますが、150mmHgのような少し高いぐらいの血圧では頭痛は起こることはありません。むしろ、頭痛という痛みストレスが原因で、血圧が高くなってしまうのです。

精神的にも肉体的にも過度なストレスは、人体に悪影響しかもたらしません。もちろん、怖い上司を完璧に避けることはできませんが、寝不足や生活習慣などは自分でコントロールすることができるはずです。
また、ストレスはほかのことで発散することもできます。特に、ウォーキングのような軽い運動はそれ自体が血圧に良い効果がありますし、ストレスを軽減する効果も期待できます。音楽を聴いたり、半身浴をしたりするなど、自分に合ったストレス対処方法を見つけるのも良いです。

-喫煙

喫煙で健康上良いことが起こることはほとんどありません。血圧に関しても、喫煙はよくない効果を及ぼします。たばこの中に含まれている様々な成分が、血管を傷つけます。それによって、動脈硬化が進みます。動脈硬化が進むと、先ほど述べたように血圧が高くなります。
それだけではなく、喫煙すると血管が収縮します。血管が収縮すると、水やりの時のホースを創造してもらうとわかりやすいかもしれませんが、血圧が上がります。このようにダブルで喫煙は血圧に対して悪影響があるのです。

禁煙するのが一番なのですが、一筋縄ではいかないのが禁煙です。ファイザーから出ている禁煙補助薬が、(2023年10月現在)手に入らないので日本では有効な禁煙外来を行うことができない状況です。気合で禁煙できれば、それに越したことはないのですが、喫煙は依存症なので気合でどうこうなるわけでもありません。

補助薬が使えないとなると、ほかの方法を考えるしかありません。あまり進められる方法ではありませんが、紙巻きたばこであれば、電子タバコに変えるだけでかなり喫煙の害を減らすことができます(それでも0には絶対になりません)。 喫煙の代わりにガムをかんだり、禁煙パイポを吸ったりするのもいい方法です。結局口寂しくて吸ってしまうという動機を解除することができるからです。過度のストレスのところでも述べましたが、ストレスのせいで喫煙してしまう人もたくさんいます。なので、適切なほかの方法でストレスを発散するのもよい方法と考えられます。




まとめ

血圧は様々な生活習慣のために高くなります。生活習慣は自分の意志で改善することができます。しかし、どのように改善すればいいのかわからないこともあると思います。そんな時は、一人で考えすぎずクリニックの医師などにご相談ください。

電話が混み合っている場合もありますが、通話可能ですのでお待ちいただければ幸いです。

確認させていただき次第、当院からメールで連絡をさせていただきます。