医局出戻りのメリット・デメリットは?後悔しないための5つの条件

「一度は自由を求めて医局を辞めたけれど、今の環境でこのまま医師人生を終えていいのだろうか……」

当直中の静かな医局や、かつての同期が学会で華々しく発表している姿をSNSで目にしたとき、そんな思いが頭をよぎることはありませんか? 30代中盤から40代、医師として脂が乗る時期に「医局への出戻り」を検討する方は、実は少なくありません。

しかし、一度辞めた場所に戻るには、心理的なハードルや「裏切り者と思われないか」という不安がつきまといます。本記事では、医局を辞めて後悔している医師が、円満に出戻り、かつキャリアを再構築するための具体的な方法と条件を、最新の動向を踏まえて解説します。

1. 医局を辞めて後悔…「出戻り」を考える医師は少なくない

「医局を辞めれば、当直や雑務から解放され、症例に集中できるはずだった」

そう考えて外の世界へ飛び出した医師の多くが、数年後に理想と現実のギャップに直面します。

ここでは、なぜ一度は辞めた医局への未練が生じるのか、その具体的な背景を掘り下げます。

症例数や専門医維持で直面する市中病院の壁

市中病院での勤務は、給与面や当直数の改善には寄与するものの、キャリア形成においては「停滞」を感じるリスクがあります。特に外科系の場合、病院の経営方針によっては定型的な手術が中心となり、高難度症例や希少症例に触れる機会が激減することがあります。

また、新専門医制度の導入以降、専門医資格の維持やサブスペシャリティ専門医の取得には、症例実績だけでなく学会発表や論文投稿が厳格に求められるようになりました。市中病院では、これらをサポートする体制や指導医が不足しているケースが多く、将来的な市場価値の低下に焦りを感じる医師が増えています。

学会やSNSで感じる「医局ネットワーク」喪失の孤独感

医局という組織は、単なる勤務先の割り振り機関ではありません。そこには、最新の知見を共有し、困難な症例を相談できる「医師としてのコミュニティ」が存在します。

市中病院で一人、あるいは少数の医師で診療に当たっていると、最新のエビデンスから取り残されているような感覚に陥ることがあります。学会会場でかつての医局員たちが集まって談笑している姿を見たり、SNSで同期が学位(医学博士)を取得したり教授に昇進したりする報告を目にすることで、「もしあのまま残っていたら」という後悔が現実味を帯びてくるのです。

【引用元】

日本専門医機構「専門医制度の概要」
https://jmsb.or.jp/

2. 一度辞めた医局への出戻りは可能か?受け入れ側の本音

「一度辞めた人間を、教授は許してくれるだろうか」と不安になるのは当然です。しかし、現在の医療業界を取り巻く環境は、かつての「医局絶対主義」から大きく変化しています。

ここでは、医局側の視点から「出戻り」をどう見ているのか、その実情を解説します。

医局側が「経験のある出戻り医師」を歓迎する2つの理由

結論から言えば、多くの医局は「経験を積んだ医師の帰還」を歓迎しています。その最大の理由は、深刻な医師不足と「働き方改革」への対応です。

  1. 即戦力の確保
    若手医師を一から育てるには時間がかかりますが、外の病院で数年の臨床経験を積んだ医師は、明日からでも即戦力として機能します。特に専門医資格を既に持っている医師は、医局にとって極めて貴重な「資源」です。
  2. 労働負荷の分散
    医師の働き方改革(2024年問題)の影響で、大学病院は時間外労働の削減を迫られています。医局員を増やし、一人ひとりの負荷を減らすことは、教授にとっても至上命題となっているのです。

喧嘩別れでも大丈夫?教授が重視するのは「過去より未来」

たとえ辞める際に「喧嘩別れ」に近い状態だったとしても、絶望する必要はありません。多くの教授にとって、数年前の感情的な対立よりも、現在の医局の運営や、今後の医局のプレゼンス向上に貢献してくれる人材かどうかの方が重要だからです。

教授も一人の組織運営者として、欠員を埋め、臨床・研究・教育の成果を出さなければなりません。あなたが誠意を持って「外で研鑽を積んだ結果、やはりこちらの医局で貢献したい」という姿勢を示せば、実利的な判断として受け入れられる可能性は非常に高いのです。

3. 医局に出戻る3つのメリットと見逃せないデメリット

出戻りを決断する前に、感情的な理由だけでなく、キャリア上の利害を冷静に比較する必要があります。

以下に、出戻りの主なメリットとデメリットを比較表とともに整理しました。

サブスペシャリティ専門医や学位取得への最短ルート

出戻りの最大のメリットは、学術的なキャリアの再起動です。大学病院は高度な症例が集中するため、サブスペシャリティ専門医の取得に必要な症例を短期間で経験できます。また、学位取得を中断していた場合、医局のサポートを得ることで研究を再開し、博士号を取得する道が開かれます。

人脈の回復と将来的な関連病院へのポスト確保

医局に戻ることは、将来的な「出口戦略」にもプラスに働きます。一定期間医局で貢献すれば、後に年齢を重ねた際、医局の関連病院での部長職や院長職といったポストが回りやすくなります。市中病院を転々とするフリーランスに近い働き方では得られない、長期的な安定が手に入ります。

「外様」扱いされるリスクと年下の上司という現実

一方で、デメリットも存在します。数年間のブランクがある間に、年下の医師が自分より上の職位に就いていることは珍しくありません。また、一度辞めたことで「忠誠心が低い」と見なされ、最初の数年間は厳しい関連病院へ派遣されるなどの「禊(みそぎ)」が必要になるケースもあります。

項目メリットデメリット
キャリア専門医・学位取得の強力なサポート昇進レースでの遅れ、キャリアの分断
環境最新の知見、高度な症例へのアクセス年下の指導医や上司、医局独自のルール
将来性関連病院での役職ポストの確保給与の一時的な低下(大学病院勤務時)
人脈学会や研究における強力なネットワーク「一度辞めた人間」という周囲の視線

4. 気まずさを解消して円満に復帰するための4ステップ

「戻りたい」と決めたら、次は実行に移すための具体的な戦略が必要です。いきなり教授に電話をかけるのは得策ではありません。

円満な復帰を実現するための、推奨される4つのステップを解説します。

ステップ1:信頼できる同期や先輩から医局の近況を探る

まずは、現在も医局に残っている同期や、話しやすい先輩に連絡を取りましょう。

  • 現在の医局の雰囲気(人手不足かどうか)
  • 自分が辞めた後の教授の評価や反応
  • 最近、他にも出戻った医師がいるか
    これらの情報を事前に得ることで、勝算を立てることができます。

ステップ2:教授へ連絡する前の「大義名分」を整理する

教授と面談する際、「今の職場が嫌だから戻りたい」というネガティブな理由は厳禁です。「外の世界で学んだことで、改めて大学病院の専門性の高さ、医局の重要性を痛感した。この専門領域で力を尽くしたい」といった、前向きかつ医局に利益をもたらす理由(大義名分)を用意しましょう。

ステップ3:謝罪と熱意を伝えるメール・電話の切り出し方

最初のコンタクトは、丁寧なメールが基本です。「突然の連絡となり大変失礼いたします。以前、多大なるご迷惑をおかけして医局を離れた〇〇です」と、まずは過去の非礼を詫びることから始めます。その上で、臨床経験を積む中で抱いた復帰への強い意志を伝え、面談の機会を請いましょう。

ステップ4:現在の勤務先との契約トラブルを防ぐ退職交渉

医局への復帰が決まっても、今の勤務先を無碍に扱ってはいけません。医師の世界は狭いため、現在の病院に迷惑をかけると、その噂が医局まで届く可能性があります。民法では2週間前となっていますが、医師の慣習としては半年前、遅くとも3ヶ月前には退職の意向を伝え、円満に引き継ぎを完了させましょう。

5. 失敗しない出戻りのための注意点とタイミング

最後に、出戻りを成功させるために不可欠な「5つの条件」を確認しましょう。これらが揃っていないと、戻った後に再び後悔するリスクが高まります。

条件1:なぜ戻るのか、自分の中の優先順位が明確である

「専門医が欲しい」「人脈を戻したい」など、戻る目的を明確にしましょう。大学病院は給与が下がり、当直や拘束時間が増えることが一般的です。そのデメリットを上回るメリットが明確でなければ、モチベーションが続きません。

条件2:医局側の「求めている役割」を理解している

医局があなたに求めているのは、研究のアシスタントなのか、関連病院を支える中堅の臨床医なのか。その期待と、自分のやりたいことが合致しているかを見極める必要があります。

条件3:タイミングを逃さない(教授交代や体制変更)

教授が交代するタイミングは、過去の人間関係をリセットする絶好のチャンスです。また、新棟設立や新診療科の立ち上げなど、人手が必要な時期も受け入れられやすいでしょう。

条件4:プライドを捨てて「新入局員」のつもりで振る舞う

年下の医師から指示を受けることもあるでしょう。しかし、そこで「自分の方が経験がある」とプライドを出すと、周囲との摩擦が生じます。謙虚な姿勢を貫けるかが、定着の鍵です。

条件5:現在の職場との関係を良好に保ちつつ退職できる

円満退職は、医師としてのプロフェッショナリズムの証です。最後まで責任を持って職務を全うする姿は、戻る先の医局からも「信頼できる医師」と評価される要素になります。

6. まとめ:医局への出戻りはキャリアを再構築する有効な選択肢

医局を一度辞めた後に戻ることは、決して「敗北」ではありません。むしろ、外の世界を知った上で、自らの意志で高度な医療や研究の道を選び直す、前向きなキャリア選択と言えます。

現在の医局は、即戦力となる中堅医師を求めています。あなたが誠意を持って過去の辞め方を詫び、これからの貢献意欲を示せば、道は必ず開けます。「戻りたいけれど、どう動けばいいかわからない」と一人で悩む時間はもったいないです。まずは信頼できるかつての仲間に連絡を取ることから、あなたの医師人生の「第2章」を始めてみませんか?

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