突然死のリスクもある「心室頻拍」
「心臓がバクバクする」「意識がもうろうとする」そんな症状が現れたら、それは危険信号かもしれません。
今回は、専門医が心室頻拍の原因や症状、最新の治療法までをわかりやすく解説します。
ご自身や大切な人の命を守るためにも、ぜひ最後までお読みください。
目次
心室頻拍ってどんな病気?
心臓がドキドキしたり、脈が飛んだりするのは、誰にでも経験があることかもしれません。
しかし、中には命に関わる危険な不整脈も存在します。それが、「心室頻拍」です。
健康な心臓は、規則正しいリズムで拍動しています。このリズムは、心臓の右上部にある「洞結節」が発する電気信号によってコントロールされています。
しかし、何らかの原因で、心臓の下部の部屋である「心室」から異常な電気信号が高速で発生することがあります。心臓が非常に速いリズムで収縮を繰り返す状態が「心室頻拍」です。
心室頻拍の危険性とは
心室頻拍は決して軽視できない不整脈です。放置すると、生命に関わる危険性もあります。
心臓のポンプ機能が低下するリスク
心室頻拍が起こると、心臓は異常な速さで拍動するため、全身に送られる血液の量が減ってしまいます。その結果、めまい、息切れ、失神などの症状が現れ、重症化すると意識を失ったり、最悪の場合、突然死に至る可能性があるのです。
「心室細動」へ移行するリスク
心室頻拍がさらに悪化すると、「心室細動」と呼ばれる状態に移行することがあります。
心室細動は、心室が細かく震えてしまい、心臓が血液を送り出すポンプ機能を完全に失ってしまう状態です。
心室細動は、突然死の主な原因の一つとされており、迅速な処置を行わなければ命を落とす危険性があります。
早期発見・早期治療が重要
心室頻拍は、適切な治療を行えば症状をコントロールし、突然死のリスクを減らすことができます。
「もしかして心室頻拍かも?」と感じたら、決して放置せず医療機関を受診し、専門医の診断を受けるようにしましょう。
心室頻拍のサインを見逃さないために
心室頻拍は、自覚症状がない場合もありますが下記のような症状が現れることがあります。
代表的な症状
- 動悸:心臓がドキドキしたり、脈が速く打つように感じます。
- めまい:頭がクラクラしたり、ふらついたりします。
- 息切れ:少し動いただけで息苦しくなったり、呼吸が浅くなったりします。
- 胸痛:胸の痛みや圧迫感を感じます。
- 失神:意識を失い、倒れてしまいます。
心室頻拍が原因で失神した場合、意識はすぐに回復することが多いですが、そのまま放置すると命に関わる危険性があります。
症状が出た時の対処法
もし、心室頻拍の症状が出たら、落ち着いて以下のことを心がけましょう。
- 安全な場所を確保:転倒など、二次的な事故を防ぐため、安全な場所に移動しましょう。
- 安静にする:横になったり、楽な姿勢をとって安静にしましょう。心臓への負担を減らすことが大切です。
- 周囲に助けを求める:一人でいる場合は、周囲の人に助けを求めましょう。
- 必要であれば救急車を呼ぶ:症状が重い場合や、初めて症状が出た場合は、迷わず救急車を呼びましょう。
心室頻拍を引き起こす様々な原因とリスク要因
心室頻拍は、一体なぜ起こるのでしょうか?
実は、様々な要因が複雑に絡み合って起こると考えられており、主な原因は以下の点が挙げられます。
心臓病との深すぎる関係
心室頻拍の最も多い原因は、「心臓病」です。心臓病と一口に言っても、様々な種類がありますが、特に心筋梗塞、狭心症、心筋症などの心臓病は、心室頻拍のリスクを高めます。
これらの心臓病によって、心臓の筋肉や血管がダメージを受けると、電気信号が正常に伝わらなくなり、心室頻拍が起こりやすくなってしまうのです。
心臓病以外にも潜むリスク要因
心室頻拍の原因は、心臓病だけではありません。心臓以外の病気や毎日の生活習慣も、心室頻拍のリスクに大きく影響を与えます。
高血圧や糖尿病などの生活習慣病は、動脈硬化を引き起こし心臓に負担をかけるため、心室頻拍のリスクを高める要因となります。
日々の生活習慣が、心臓に大きな影響を与えていることを意識することが大切です。喫煙、過度の飲酒、ストレス、睡眠不足、過労などは、心臓に負担をかけ心室頻拍のリスクを高める可能性があります。
薬や遺伝、原因不明の場合も…
普段何気なく服用している薬が、思わぬ副作用を引き起こすことがあります。一部の薬には、心室頻拍のリスクを高める可能性があるため注意が必要です。自己判断で市販薬を服用するのではなく、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。
また、心室頻拍の中には、遺伝が関与しているものもあります。例えば、「QT延長症候群」「ブルガダ症候群」といった病気は、遺伝子の異常によって心臓の電気信号の伝達に異常が起こり、心室頻拍や突然死のリスクが高くなることが知られています。
家族に心室頻拍や突然死を経験した人がいる場合は、一度医療機関を受診し、精密検査を受けることを検討してみましょう。
さらに、様々な検査を行っても心室頻拍の原因が特定できない場合があります。これを「特発性心室頻拍」と呼びます。特発性心室頻拍は、心臓に明らかな異常がないにもかかわらず心室頻拍が起こるため、原因を特定することが難しいとされています。
最新技術で心臓を守る! 心室頻拍の治療法
心室頻拍と診断された場合、その頻度や症状、原因、心臓の状態などを考慮して最適な治療法が選択されます。
薬で心臓のリズムを整える「薬物療法」
薬物療法は、抗不整脈薬を使って、心臓のリズムを正常に整える治療法です。心室頻拍の原因や症状、患者さんの体質に合わせて最適な薬剤が選択されます。
薬物療法は、一般的に体への負担が少なく比較的始めやすい治療法ですが、薬の種類や量によっては副作用が現れる可能性もあるため注意が必要です。
カテーテルアブレーション
カテーテルアブレーションは、足の付け根などから細い管(カテーテル)を用いて、心室頻拍を引き起こしている異常な電気信号の発生源を焼灼する治療法です。原因となる部位をピンポイントで治療できるため高い治療効果が期待できます。
植込み型除細動器(ICD)
植込み型除細動器(ICD)は、心臓に異常なリズムが発生した際に電気ショックを与えて心臓のリズムを正常に戻す埋め込み型の医療機器です。
ICDは、心室頻拍が原因で起こる突然死を予防するための非常に有効な治療法として知られています。
その他の治療法
上記以外にも、心室頻拍の症状や原因、心臓の状態などに応じて下記のような治療法が行われることがあります。
ペースメーカーは、心臓の拍動が遅すぎる場合に電気刺激を与えて心臓の拍動を正常に保つための医療機器です。心室頻拍の中には、ペースメーカーを埋め込むことで症状をコントロールできる場合があります。
薬物療法やカテーテルアブレーションなどの治療で効果が得られない場合や、心臓の構造に異常がある場合には、外科手術が検討されることがあります。
まとめ
心室頻拍は命に関わる可能性のある危険な不整脈です。しかし、早期発見と適切な治療により、多くの場合コントロールすることができます。もし、心室頻拍が疑われる症状が現れたり不安なことがあれば、決して放置せず医療機関を受診し専門医の診察を受けましょう。
また、日頃から健康的な生活習慣を心がけ、定期的な健康診断を受けることで心室頻拍を含む様々な病気のリスクを減らすことができます。ご自身の心臓の健康を守るために、正しい知識を身につけ適切な行動をとっていきましょう。
お問い合わせ >>
お電話でのお問い合わせ >>
TEL.06-6147-4400お電話でのお問い合わせ >>
TEL.06-6147-4400