あなたは知っていますか?日本では年間約7万人が心臓の突然死で亡くなっており、その多くが心室細動が原因だということを。
突然死を引き起こす心室細動とは一体何なのでしょうか?なぜ起こり、どのように治療するのでしょうか?
この記事では、心室細動の原因と治療法を詳しく解説し、あなたとあなたの大切な人の命を守るために必要な知識をお伝えします。
目次
心室細動とは
心臓は、全身に血液を送るために休むことなく働いている大切な臓器です。この心臓が規則正しく動くためには、電気信号が重要な役割を担っています。
心室細動の定義と基礎知識
心臓には、全身に血液を送り出すポンプの役割を担う「心室」という部分があります。この心室に異常な電気信号が発生すると、心筋が細かくけいれんし始め、心臓が震えるように細かく動いてしまいます。これが「心室細動」と呼ばれる状態です。
心臓が震えるように動いてしまうと、血液をうまく送り出すことができなくなり、全身に酸素が行き渡らなくなってしまいます。その結果、意識を失って倒れてしまったり、最悪の場合、死に至ることもあるのです。
心室細動のメカニズム
では、なぜ心室細動が起こってしまうのでしょうか?心臓は規則正しいリズムで電気信号を発することで、心筋を収縮させ血液を送り出しています。
この電気信号の伝導が、心筋梗塞や心不全などの心臓病が原因で乱れてしまうことがあります。まるで、オーケストラの演奏中に、指揮者が突然指揮棒を振り回し、演奏者たちがバラバラに楽器を鳴らし始めたような状態をイメージしてみてください。
心室細動の症状
心室細動は、心臓が血液を送り出すことができなくなるため、全身に酸素が行き渡らなくなり、様々な症状が現れます。
主な症状には以下のようなものがあります。
- 突然の意識消失
- 呼吸の停止
- 脈が触れなくなる
- 顔面蒼白
- けいれん
心室細動は突然起こり、数分以内に適切な処置を行わなければ死に至る可能性が高い、非常に危険な状態です。そのため、これらの症状が現れた場合、すぐに救急車を呼ぶ必要があります。
早期発見が鍵! 心室細動の原因と診断方法
心室細動は、一体何が原因で起こってしまうのでしょうか?また、どのように診断すれば良いのでしょうか?
ここでは、心室細動の原因と診断方法について詳しく解説していきます。
心室細動の主な原因
心室細動の主な原因は、心臓の病気であることがほとんどです。中でも、以下の病気は心室細動のリスクが高いとされています。
- 心筋梗塞
- 心筋症
- 心不全
- 心臓弁膜症
- 先天性心疾患
これらの心臓病になると、心臓の機能が低下し、心室細動が起こりやすくなります。また、心臓以外の病気や状態も心室細動を引き起こす要因となることがあります。
- 電解質異常(特にカリウムやマグネシウムの異常)
- 薬物中毒
- 重度の低酸素状態
- 激しい運動や精神的ストレス
- アルコールの過剰摂取
心電図による診断
心室細動は、心電図検査によって診断されます。心電図検査とは、心臓の電気的な活動を記録する検査のことです。心室細動が起こると心電図には特徴的な波形が現れます。
病院では、心電図モニターを患者さんに装着し、心臓の状態を24時間体制で監視することもあります。これは、ホルター心電図と呼ばれる検査方法です。また、血液検査を行い、電解質異常や他の潜在的な原因を調べることもあります。
心室細動の治療法
心室細動は、命に関わる危険な状態ですが、適切な治療を行うことで救命できる可能性があります。ここでは、心室細動の主な治療法について解説します。
電気ショック(AEDと植込み型除細動器)
心室細動の治療で最も重要なのが、電気ショックによる治療(除細動)です。
電気ショックは、心臓に電気的な刺激を与えることで、心筋の活動を正常に戻す治療法です。これは、心臓の電気系統をリセットするようなもので、不規則な心臓のリズムを正常に戻す効果があります。
電気ショックには、主に以下の2種類があります。
-
AED(自動体外式除細動器)
- 街中や駅、学校などに設置されていることが多く、一般の方でも使用できます。
- 音声ガイダンスに従って操作することで、専門知識がなくても適切な処置を行うことができます。
-
植込み型除細動器
- 心臓に直接埋め込むタイプの除細動器です。
- 心室細動などの不整脈を感知すると、自動的に電気ショックを与えて心臓の働きを正常に戻します。
- 心室細動のリスクが高い患者さんに対して使用されます。
カテーテルアブレーション
カテーテルアブレーションは、心臓の中にカテーテルと呼ばれる細い管を挿入し、心室細動の原因となっている異常な電気信号を発している部分を焼灼する治療法です。
この治療法は、以下のような特徴があります。
- 心室細動を根治できる可能性がある
- 局所麻酔で行うことができる
- 手術に比べて体への負担が少ない
- 技術の進歩により、成功率が向上している
ただし、全ての患者さんに適用できるわけではなく、症例に応じて適切な治療法を選択する必要があります。
薬物治療
薬物治療は、心室細動を予防したり、再発を防いだりする目的で行われます。心室細動の治療薬には、主に以下のようなものがあります。
-
抗不整脈薬
- 心臓の電気的活動を安定させ、不整脈を抑制します。
- アミオダロンやソタロールなどが使用されます。
-
ベータ遮断薬
- 心拍数を落ち着かせ、心臓への負担を軽減します。
- メトプロロールやアテノロールなどが使用されます。
-
ACE阻害薬
- 血圧を下げ、心臓の負担を軽減します。
- エナラプリルやリシノプリルなどが使用されます。
これらの薬物は、患者さんの状態に応じて適切な選択が必要です。また、副作用の可能性もあるため、医師の厳密な管理のもとで使用する必要があります。
心室細動を予防しよう! 今日からできる生活習慣改善
心室細動は、突然起こる病気であり完全に予防することは難しいですが、日常生活の中でできる予防策もいくつかあります。
生活習慣の改善
心室細動のリスクを下げるためには、生活習慣の改善が重要です。具体的には、以下のような点に注意しましょう。
- 禁煙:喫煙は心臓病のリスクを高めます。禁煙することで心臓の健康を守ることができます。
- バランスの取れた食事:塩分や脂肪の摂取を控え、野菜や果物を積極的に摂取しましょう。
- 適度な運動:定期的な有酸素運動は、心臓の健康維持に効果的です。ただし、過度な運動は逆効果になる可能性もあるので注意が必要です。
- 十分な睡眠:質の高い睡眠は、心臓の健康維持に重要です。
- ストレス管理:過度のストレスは心臓に悪影響を与えます。リラックス法や趣味などでストレス解消を心がけましょう。
- アルコール摂取の制限:過度の飲酒は心臓に負担をかけます。適度な飲酒を心がけましょう。
これらの生活習慣を改善することで、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を予防し、心血管疾患のリスクを減らすことができます。
定期的な健康診断の重要性
心室細動は自覚症状がない場合でも、定期的な健康診断を受けることで早期発見できる可能性があります。
健康診断では、以下のような検査が行われます。
- 心電図検査
- 血圧測定
- 血液検査(コレステロール値、血糖値など)
- 胸部レントゲン検査
特に、40歳以上の方や、心臓病のリスク因子を持っている方は、定期的な健康診断を受けるように心がけましょう。
心室細動発生時の対応
もしも、目の前で人が倒れ心室細動を起こしていたら?一刻を争う緊急事態です。ここでは、心室細動発生時の対応について解説します。
AEDは、以下の手順で使用します。
- AEDを用意し、電源を入れる。
- 音声ガイダンスに従って、患者の胸部に電極パッドを貼り付ける。
- AEDが自動的に心電図を解析し、電気ショックが必要かどうかを判断する。
- 電気ショックが必要と判断された場合、音声ガイダンスの指示に従ってボタンを押す。
- その後も音声ガイダンスに従って心肺蘇生法を続ける。
救命処置の手順
AEDを使用するのと並行して救命処置を行うことも重要です。以下の手順で行います。
- 意識の確認:肩を軽くたたき、声をかける。
- 119番通報:周囲の人に協力を求め、救急車を要請する。
- 呼吸の確認:胸の動きを見て、呼吸をしているか確認する。
-
胸骨圧迫:
- 胸の中央に両手を重ねて置く。
- 肘を伸ばし、体重をかけて強く速く圧迫する。
- 1分間に100〜120回のペースで行う。
-
人工呼吸(訓練を受けた人のみ):
- 気道を確保し、鼻をつまむ。
- 口対口で息を吹き込む。
- 30回の胸骨圧迫に対し、2回の人工呼吸を行う。
- AEDが到着したら、音声ガイダンスに従って使用する。
- 救急隊が到着するまで、または傷病者が動き出すまで続ける。
緊急時の連絡先と対応
心室細動が発生した場合は、速やかに119番通報し救急車を要請しましょう。119番通報の際には、以下の点を落ち着いて伝えてください。
- 発生場所(住所や目印となる建物)
- 傷病者の状態(意識、呼吸の有無)
- 傷病者の年齢と性別(わかる範囲で)
- 通報者の名前と連絡先
また、周囲の人にも協力を求め、AEDを探したり救急隊員に案内したりするなど、救助活動を手伝ってもらいましょう。
心室細動から命を守るために私たちができること
今回は、心臓が突然停止してしまう恐ろしい病気「心室細動」について解説しました。心室細動は、心臓の電気信号の異常によって引き起こされ、意識消失や突然死のリスクを伴う危険な状態です。
しかし、決して他人事ではありません。自分自身や大切な人の命を守るため、この記事で学んだ知識を活かし日頃から備えておくことが大切です。また、機会があればAEDの使用法や心肺蘇生法を学ぶことをおすすめします。
一人ひとりの意識と行動が、大切な命を救う力となります。心室細動について正しく理解し、適切に対応できる社会を目指しましょう。
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