ホルター心電図による不整脈の検査方法とその効果

あなたは最近、胸がドキドキしたり、めまいを感じたりしていませんか?これらの症状、実は不整脈のサインかもしれません。しかし、不整脈は、24時間いつ起こるかわからないため、病院で短時間だけ心電図を測っても、異常が見つからないことがあるんです。
そんな時に役立つのが「ホルター心電図」検査。24時間あなたの心臓の動きを記録し、普段の生活の中で起こる不整脈を捉えることができるのです。
この記事では、ホルター心電図検査の方法や効果、そして検査を受ける際の注意点までを詳しく解説していきます。

この記事を書いた人
坂口 海雲

大阪市立大学医学部を卒業後、大阪市立大学循環器内科に入局。ベルランド総合病院、大阪市立大学病院への勤務を経て、福島吉野スマイル内科・循環器内科を開院。Dr.AGAクリニックの総院長も就任中。

所属:日本内科学会日本循環器学会、医学博士(循環器内科)

こんな時に役立つ!「ホルター心電図」検査とは?

突然の動悸、息切れ、めまい。こうした症状が出て、病院で心電図検査を受けても「異常なし」と言われた経験はありませんか?
実は、これらの症状は一時的なものなので、病院に行ったときにはすでに治まってしまっていることがよくあるんです。不整脈は、24時間のうちいつ起こるかわからないため、病院で数分間だけ測定する通常の心電図検査では、異常を見つけられないことがよくあります。
そこで登場するのが「ホルター心電図」検査です。この検査は、小型の記録装置を24時間身に付ける事であなたの心臓の動きを連続して記録します。寝ているとき、仕事中、運動時など、日常生活のあらゆる場面での心臓の状態を把握できるのです。
ホルター心電図検査が特に役立つのは、以下のような場合です

  1. 症状が不定期に起こり、通常の心電図では捉えられない
  2. 夜間や特定の活動中にのみ症状が出る
  3. 薬の効果を確認したい
  4. 不整脈の種類や頻度を詳しく知りたい

この検査により、それまで見逃されていた不整脈を発見できることも多くあります。

24時間記録で原因を徹底追及!ホルター心電図の検査方法


ホルター心電図検査は、名前は難しそうですが、実際の検査方法はシンプルです。ここでは、検査の流れを詳しく解説します。

  1. 検査の準備
    • 検査前に、医師から検査の目的や注意点について説明を受けます。
    • 胸に電極を貼り付けるため、検査当日は体に油分や汗を残さないようにしましょう。
  2. 装置の装着
    • 通常5〜7個の電極を胸に貼り付けます。
    • 電極はコードで小型の記録装置(ホルター心電計)に接続されます。
    • 記録装置は、ベルトやポーチで体に固定します。
  3. 24時間の記録
    • 装着後、通常の日常生活を送りながら24時間(場合により48時間)心電図を記録します。
    • この間、症状が出たときや特別な活動をしたときは、付属の日記に記録します。
  4. 日常生活での注意点
    • シャワーや入浴は避け、装置を濡らさないようにしましょう。
    • 激しい運動や装置に強い衝撃を与える行動は控えてください。
    • 電子レンジや携帯電話など、電磁波を発する機器にはあまり近づかないようにします。
  5. 装置の返却と解析
    • 24時間後、病院で装置を外します。
    • 記録されたデータは専門医が解析し、結果は後日説明されます。
  6. 検査にかかる時間と費用
    • 装着に30分程度、翌日の取り外しに15分程度かかります。
    • 費用は保険適用で、3割負担の場合、約5,000〜7,000円程度です。

ホルター心電図検査は、あなたの心臓の24時間の活動を詳細に記録します。これにより、普段の生活の中で起こる不整脈や心臓の異常を正確に捉えることができるのです。

ホルター心電図と他の心電図検査の違い

心電図検査にはいくつかの種類がありますが、それぞれに特徴があります。ここでは、ホルター心電図と他の主な心電図検査の違いを比較し、それぞれの特徴や適応について解説します。

検査名 検査時間 特徴 適応
通常の心電図 数分間 安静時の心臓の状態を測定
  • 基本的な心臓の状態チェック
  • 明らかな不整脈の診断
ホルター心電図 24時間 日常生活における心臓の状態を連続的に測定
  • 間欠的な症状
  • 生活の中で起こる不整脈の診断
運動負荷心電図 10~20分程度 運動時の心臓の反応を見る
  • 冠動脈疾患の診断
  • 運動誘発性の不整脈の検出

さらに、ホルター心電図検査には、以下のようなメリット・デメリットがあります。

メリット

  • 24時間連続記録:日常生活中のあらゆる状況での心臓の動きを捉えられます。
  • 無症状の不整脈も検出:自覚症状がない不整脈も発見できます。
  • 症状と心電図変化の関連付け:記録した症状と心電図の変化を照合できます。
  • 非侵襲的:体に負担をかけずに詳細な情報が得られます。
  • 薬の効果確認:治療薬の効果を24時間通して確認できます。

デメリット

  • 行動の制限:入浴や激しい運動はできません。
  • 装着の不快感:24時間装着するため、違和感を感じる場合があります。
  • 皮膚トラブル:まれに電極による皮膚かぶれが起こることがあります。
  • 検出の限界:24時間以上の間隔で起こる不整脈は捉えられない可能性があります。
  • 誤検出の可能性:体動によるノイズを不整脈と誤って検出することがあります。

重要なのは、検査結果の解釈は必ず専門医が行い、その結果に基づいて適切な治療方針を決定することです。検査結果に不安がある場合は、遠慮なく医師に質問してください。

ホルター心電図で何がわかる? 診断できる病気と治療法を解説


ホルター心電図検査は、24時間にわたる心臓の動きを詳細に記録することで、様々な情報を提供してくれます。ここでは、この検査で分かることと、診断可能な主な疾患について解説します。

  1. ホルター心電図検査で分かること
    • 不整脈の種類と頻度
    • 不整脈が起こる時間帯や状況
    • 心拍数の変動(最小、最大、平均)
    • ST部分の変化(心筋虚血の兆候)
    • 症状と心電図変化の関連性
  2. 主な不整脈の種類と症状
    a) 心房細動
    • 特徴:心房が不規則に細かく震える
    • 症状:動悸、息切れ、めまい
    • 危険性:脳梗塞のリスク上昇
    b) 心室性期外収縮
    • 特徴:心室から余分な拍動が生じる
    • 症状:胸の違和感、動悸
    • 危険性:頻度が多い場合、心不全のリスク
    c) 発作性上室性頻拍
    • 特徴:心拍数が突然速くなる
    • 症状:動悸、めまい、胸の圧迫感
    • 危険性:頻繁に起こる場合、心機能低下の可能性
  3. ホルター心電図で診断できる主な疾患
    • 各種不整脈(上記に加え、洞不全症候群、房室ブロックなど)
    • 虚血性心疾患(狭心症など)
    • 心筋症
    • QT延長症候群
  4. 検査の効果と重要性
    ホルター心電図検査の主な効果
    • 通常の心電図では捉えられない不整脈の発見
    • 症状と心電図変化の関連性の把握
    • 薬物療法の効果判定
    • 無症状の心疾患の早期発見

ホルター心電図検査は、心臓の状態を24時間という長時間にわたって観察できる非常に有用な検査です。しかし、この検査だけで全てが分かるわけではありません。症状の詳細や生活習慣、他の検査結果なども併せて総合的に判断することが重要です。

よくある質問(FAQ)

ホルター心電図検査について、患者さんからよく寄せられる質問にお答えします。

Q1: ホルター心電図検査中に入浴はできますか?
A: 申し訳ありませんが、入浴はできません。装置が濡れると故障の原因になります。ただし、部分的な体を拭く程度であれば問題ありません。検査前日にしっかり入浴しておくことをおすすめします。
Q2: 検査中に携帯電話は使えますか?
A: 使用できますが、装置から30cm以上離して使用してください。携帯電話の電磁波が記録に影響を与える可能性があるためです。
Q3: 検査中に眠れるか心配です。
A: 多くの方は普段通り眠ることができます。装置は小型で軽量なので、慣れれば気にならなくなります。寝返りも可能ですが、コードが絡まないよう注意してください。
Q4: 検査結果が出るまでどのくらいかかりますか?
A: 当日検査結果をご説明できます。
Q5: 検査で不整脈が見つかったら、必ず治療が必要ですか?
A: 必ずしもそうではありません。不整脈の種類、頻度、症状の有無などを総合的に判断して、治療の必要性を決定します。軽度の不整脈の場合、経過観察のみということもあります。

まとめ

ホルター心電図検査は、あなたの心臓の健康を守るための強力なツールです。しかし、検査を受けるだけでは十分ではありません。結果を正しく理解し、医師のアドバイスに従って適切な対策を取ることが重要です。
また、日頃から自分の体調の変化に注意を払い、気になる症状があれば早めに医療機関を受診することをおすすめします。心臓の健康は、日々の小さな心がけから始まります。
この記事を通じて、ホルター心電図検査への理解が深まり、あなたの心臓の健康管理に役立てていただければ幸いです。心臓は私たちの命を支える大切な臓器です。日々の生活の中で、自分の心臓により耳を傾け、大切にしていきましょう。

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