咳喘息の治療薬と使い方|医師が教える最新の治療法と症状改善のコツ

夜になるとひどくなる咳、市販の咳止め薬を飲んでもなかなか治らない。そんな悩みを抱えている方、実は『咳喘息』の可能性があるかもしれません。幸い、咳喘息は適切な治療を受ければ、症状を改善することができます。ただし、使用する薬や治療法は人によって異なるため、正しい知識を持つことが大切です。

この記事では、咳喘息の治療法と使われる薬についてわかりやすく解説していきます。どうして薬を使う必要があるのか、どんな種類の薬があるのか、そして正しい使い方まで、詳しく説明していきますのでぜひ最後までご覧ください。

この記事を書いた人
坂口 海雲

大阪市立大学医学部を卒業後、大阪市立大学循環器内科に入局。ベルランド総合病院、大阪市立大学病院への勤務を経て、福島吉野スマイル内科・循環器内科を開院。Dr.AGAクリニックの総院長も就任中。

所属:日本内科学会日本循環器学会、医学博士(循環器内科)

1. 咳喘息はなぜ治る?医師が教える治療の仕組みとポイント

なぜ咳が長引いてしまうのか、その原因をまず理解しましょう。咳喘息では、気道の入り口付近の粘膜に炎症が起きています。この炎症によって気道がとても敏感になり、ちょっとした刺激でも咳が出てしまうのです。

【炎症が起こると、こんな変化が】

  • 粘膜が腫れて敏感になる
  • 気道が少し狭くなる
  • 粘液(たん)が増える

そのため、咳喘息の治療では「気道の炎症を抑えること」が最も重要になります。炎症を抑えることができれば、自然と咳も減っていくのです。

【治療の目標】

  • 咳の回数を減らす
  • 夜間の症状を改善する
  • 日常生活に支障がない状態にする
  • 炎症を抑えて再発を防ぐ

では、症状の重さによって、どのような治療が選ばれるのでしょうか?

【症状の重さと治療法の選び方】

  • 軽症:吸入ステロイド薬を中心とした治療
  • 中等症:吸入ステロイド薬に加えて、気管支を広げる薬(気管支拡張薬)も使用
  • 重症:複数の種類の薬を組み合わせた治療

特に大切なのは、「症状が出ていなくても治療を続ける」ということです。なぜなら、気道の炎症は目に見えないまま進行することがあるからです。医師の指示に従ってきちんと薬を使い続けることが症状の改善への近道となります。

2. 咳喘息の薬の選び方|市販薬と処方薬の違いや最適な使用法

咳喘息の薬は大きく2つに分かれます。毎日使う「長期管理薬」と、咳が出た時に使う「発作治療薬」です。

【治療の中心となる吸入ステロイド薬】

これは気道の炎症を直接抑える薬です。効果が出るまでに1~2週間ほどかかることがありますが、継続して使うことで咳を改善できます。この薬は医師から処方される吸入タイプの薬です。

【普段の治療で使う薬(長期管理薬)】

気道の炎症を抑えるために、毎日決まった時間に使います。主に2種類です。

  • 吸入ステロイド薬:気道の炎症を抑えます
  • 配合剤:炎症を抑えながら、気道も広げる効果があります

【咳が出た時に使う薬(発作治療薬)】

急な咳が出た時に使用する薬です。数分で効果が出ますが一時的な効果しかありません。頻繁な使用は避けましょう。

【市販薬と病院でもらう薬の違い】

  • 市販薬:一時的に咳を抑える効果はありますが、原因となる炎症は改善しません
  • 病院の薬:気道の炎症自体を治療できるため、咳の原因に直接効きます

3週間以上咳が続く場合は、市販薬での対処は適切ではありません。医師に相談して、原因に合った治療を受けることが大切です。

3. 咳喘息の吸入薬|失敗しない使い方と効果を高めるコツ

咳喘息の治療で使う吸入薬。「ただ吸えばいい」と思っていませんか?実は、正しい使い方をしないと、折角の薬が気道まで届かないことがあるのです。

【吸入薬にはこんな種類があります】

 吸入薬には大きく3種類あり、それぞれ特徴が異なります。

  • 粉タイプ:カプセルや容器の中の粉末を吸い込みます
  • スプレータイプ:缶から出る霧状の薬を吸入します
  • ソフトミストタイプ:とても細かい霧を、ゆっくりと吸い込めます

【効果的な吸入のためのポイント】

正しい姿勢と呼吸が大切です。以下の手順で行いましょう

1.まず姿勢を整えます

  • 背筋をまっすぐに伸ばして座るか立ちます
  • あごを少し引きます
  • リラックスした状態を保ちます

2.正しい呼吸を意識します

  • まずは、ゆっくりと息を吐ききります
  • 次に、薬を深く大きく吸い込みます
  • 最後に、5秒ほど息を止めます

【吸入後のケアを忘れずに】

吸入が終わったら、必ず以下のケアを行いましょう。

  • 口の中をすすぎます
  • しっかりとうがいをします
  • 使用したデバイスは清潔に保ちます

薬が残っていると、思わぬ副作用が出ることがあるので、このケアは特に重要です。

【こんな使い方には要注意!】

よくある間違いとその影響について説明します。

  • 「息を吐ききらずに吸入」 →薬が十分に肺まで届かず、効果が弱くなってしまいます
  • 「弱い力で吸入」 →粉タイプの場合、薬が気道の奥まで届きにくくなります
  • 「うがいを忘れる」 →口の中に薬が残り、カビが生えるなどの副作用の原因に

自信がない時は、遠慮せずに医師や薬剤師に確認してください。正しい使い方を覚えることで、薬の効果を最大限に引き出すことができます。

まとめ:正しい治療で咳喘息を改善しよう

【治療の基本】

  • 気道の炎症を抑えることが治療の中心
  • 症状の重さに合わせて治療法を選択
  • 症状が落ち着いても継続治療が大切

【覚えておきたい薬の知識】

  • 長期管理薬:毎日使って炎症を抑える
  • 発作治療薬:急な咳の時だけ使用
  • 市販薬だけでの対処は避ける

【効果的な吸入のポイント】

  • 正しい姿勢と呼吸法を意識
  • 使用後のケアを忘れずに
  • 不安な時は医師や薬剤師に相談

3週間以上咳が続く場合は、医師に相談することをおすすめします。適切な治療を続けることで咳喘息の症状は必ず改善できます。一人で抱え込まず、専門家に相談しながら上手に付き合っていきましょう。

次回は、治療効果を最大限に引き出すための生活管理のポイントについて詳しく解説します。日常生活での注意点から症状管理の工夫まで、実践的なアドバイスをご紹介しますのでぜひご覧ください。

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