歯列矯正をしたいけれど、やっぱり気になるのは見た目…だからマウスピース矯正をしようか考えている人は多いですよね。マウスピース矯正にかかる費用やブランド毎の特徴、ワイヤー矯正との違いについて分かりやすく解説しています。
ワイヤーが目立つワイヤー矯正よりもマウスピースの方がメリットが多い印象を持たれる方が多いですが、マウスピース矯正にもデメリットはあります。良いところと悪いところをきちんと把握した上で、歯列矯正をどうするか検討してみて下さい。
マウスピース矯正とは
マウスピース矯正とは、マウスピース型の矯正器具を口にはめ込むことによって歯を移動させる矯正方法のことです。歯列矯正のイメージとしては、ブラケットを使用したワイヤー矯正を思い浮かべると思いますが、マウスピースは透明なので目立ちにくく、矯正していることが分かりにくいです。
日本の歯科クリニックでも、待合室にマウスピース矯正のポスターが張ってあったりしますよね。
矯正用のマウスピースは、実際の歯並びと小さなズレがあるものをオーダーメイドで何個か作ります。作ったマウスピースを約1ヵ月サイクルで交換していき、歯を移動させていくのがマウスピース矯正の仕組みです。
マウスピース矯正の治療方法・リスクについて
治療方法 | 悪い歯ならびや噛み合わせを、きちんと噛み合うようにして、きれいな歯ならびにする歯科治療 |
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リスク | 長期的な矯正装置の装着によって、歯の磨き残しから生まれる虫歯・歯肉炎・歯周病などのリスク。装着した直後に痛みを感じる可能性。治療中に一時的にかみ合わせに不具合をきたす可能性。 |
注意点 | 1日20時間以上のマウスピース装着が必須 |
ワイヤー矯正よりも虫歯・歯周病のリスクは低いですが、マウスピース矯正は1日20時間以上、装着しないといけないというデメリットは事前に把握しておきましょう。
十数ブランドのマウスピース矯正が存在
マウスピース矯正で使用するマウスピースは、歯科医院やクリニックがオーダーメイドで作っているわけではありません。マウスピースにはブランド(製造メーカー)があり、各歯科医院、各クリニックごとに好きなものを取り入れています。
そのため、そのブランドごとの特徴を捉えておく必要があります。治療料金も治療期間も治療範囲も大きく異なってくるのです。そのため、事前にその歯科医院やクリニックがどのブランドを取り扱っているか確認する必要があります。重要なことなので覚えておきましょう。
マウスピース矯正ブランド11社を比較
マウスピースを製造しているブランド11社の比較表がこちらです。費用目安の違いや、治療範囲の違いが大きなチェックポイントになります。
値段目安 | 開発国 | 治療範囲 | 治療期間目安* | 通院期間 | 推奨年齢 | |
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ウィスマイル矯正 | 10万~66万 | 日本 | 奥歯を含む 全顎 |
3ヶ月~11ヶ月 | 2ヶ月~3ヶ月/1回 | 高校生からも可 |
キレイライン矯正 | 23.1万~41.8万 | 日本 | 前歯上下12本 | 5ヶ月~1年3ヶ月 | 45日/2回 3ヶ月/2回 |
男性16歳以上 女性14歳以上 (前歯の歯根完成時期が目安) |
インビザライン | 33万~100万 | アメリカ | 奥歯を含む 全顎 |
3ヶ月~3年 | 1ヶ月~3ヶ月/1回 | 小児矯正あり |
マウスピース矯正 ローコスト |
22万~120万 | 日本 | 奥歯を含む 全顎 |
3ヶ月~ | 2ヶ月/1回 | – |
クリアコレクト | 15万~55万 | アメリカ | 奥歯を含む 全顎 |
1ヶ月~3年 | 2ヶ月/1回 | – |
アソアライナー | 20万~70万 | 韓国 | 前歯上下12本 | 3ヶ月~1年半 | 1ヶ月/1回 | – |
Oh my teeth | 33万/66万 | 日本 | 奥歯を含む 全顎 |
2ヶ月~ | 原則不要 | 永久歯列完了後 |
hanaravi | 33万/66万 | 日本 | 前歯上下12本 | 3ヶ月~ | 原則不要 | 15歳~ |
Smile TRU | 20万~50万 | アメリカ | Level1~2前歯部 小臼歯部 |
3ヶ月~ | 2週間/1回 | – |
DENマウスピース | 40万~100万 | 日本 | 奥歯を含む 全顎 |
6ヶ月~2年 | 2週間~1ヶ月/1回 | 小児矯正あり |
DPEARL | 30万~40万 | 日本 | 奥歯を含む 全顎 |
平均10ヶ月 | 1ヶ月/1回 | – |
マウスピース矯正のおすすめブランド4選
値段の安さはもちろん、ちゃんと歯列矯正の実績があって評判の良いマウスピース矯正を探している人向けに、おすすめのマウスピース矯正を4つご紹介します。
値段が安いからという理由だけで選んでしまうと、追加料金の多さや仕上がりに納得がいかず後悔してしまうことが多いため、こちらのおすすめを参考にしてみてください。
ウィ・スマイル矯正
費用目安 | 10万~66万円 |
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治療範囲 | 奥歯を含む全顎 |
治療期間目安* | 3ヶ月~11ヶ月 |
取り扱い医院 | 全国37院 |
- 明朗会計で来院の度に費用がかかることがない
- 3Dシミュレーションで治療後のイメージができる
- 出っ歯やすきっ歯にも対応した矯正
- 66万円で5年間、通い放題のプランがある
- 初診料が0円。検査料もかからない
- 全国37院の歯科クリニックで取り扱いがある
ウィ・スマイル矯正は全国37院の歯科クリニックで取り扱いがあるブランドで、奥歯を含む全顎矯正にも対応しています。プランは4回、8回、12回、18回など豊富にありますので、軽度でも重度でも自分に合った最適なプランを提案してもらえます。
このブランドがおすすめできる理由の1つとして、5年間無制限でマウスピースを制作できるプランがあることです。しかも料金は66万円とリーズナブルな価格で、調整料や保定管理料などもコミコミの値段です。
5年間何度でもマウスピースを作れるプランはインビザラインでもありますが、私のケースだと約90万円+調整料の見積もりでした。30万円ほど安いため、実績に加えてコスパも求めている人には嬉しいポイントですね。
ウィ・スマイル矯正は初診料や初回カウンセリングが無料となっているので、気になった方は提携している最寄りの歯科クリニックで相談してみてください。
キレイライン矯正
費用目安 | 23.1万~41.8万円 |
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治療範囲 | 部分矯正のみ |
治療期間目安* | 軽度・中度:5ヶ月~1年3ヶ月 |
取り扱い医院 | 全国115院 |
- 部分矯正だからリーズナブルな価格で矯正できる
- ホワイトニングも料金に含まれている
- 提携クリニックは全国115院あり通いやすい
- 2017年4月~2022年3月の契約者数が10万件以上ある
- 都度払いプランもあり、自分のペースで治療を進められる
歯科矯正は100万円以上の費用がかかるイメージを持っておられる方も多いですが、キレイラインは前歯上下6本(計12本)の部分矯正のみ力を入れることで低価格かつ高いクオリティの実現をさせたブランドです。
対応できる歯並びは、出っ歯・すきっ歯・ガタガタした歯並びなどが挙げられます。抜歯の必要がある矯正には向いていませんが、見える範囲だけ矯正してコストを抑えたい方には特におすすめです。
値段の目安は23.1~41.8万円となっており、支払い方法は現金・クレジットカード・デンタルローンがあります。デンタルローンを利用すれば月々約3,000円*からマウスピース矯正ができるため、無理なく治療を進行していくことができるでしょう。
※デンタルローンを利用して7回コース(税込319,000円)を頭金なし・96回払いで支払う場合の手数料抜き・税別の分割支払金額です。
※一部クリニックはローン非対応。
※信販会社や手数料はクリニックにより異なります。
また、キレイラインの価格にはホワイトニングの料金も含まれているため、歯列矯正と一緒にホワイトニングもやってみたいと思っていた方には嬉しいポイントですね。提携クリニックは全国115院あるため、気になる方は一度チェックしてみてください。
※クリニックに来院した際には初回検診料として税込3,300円程度の費用がかかります。
インビザライン
費用目安 | 33万~100万 |
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治療範囲 | 奥歯を含む全顎 |
治療期間 | 3ヶ月~3年 |
取り扱い医院 | 全国171名(インビザドクター) |
- 世界100ヵ国以上、利用者1000万人以上と高い実績がある
- どのような治療を行うのか、治療の結果どうなるのかが事前に分かる
- 目立たないため歯列矯正を始めやすい
- 痛みが少なく金属アレルギーでも安心して利用可能
- 全国に171名のインビザドクターが在籍している
インビザラインは、アメリカのアライン・テクノロジー社が提供しているマウスピース矯正の先駆けとも言われている歴史ある矯正方法です。その実績もあってか世界100ヵ国以上で導入されており、利用者は1000万人以上とされています。
インビザラインシステムの強みとして挙げられるのが、3Dコンピューターを使って事前にどのような歯が動いて矯正されていき、結果的にどのような歯並びになるのかが事前に分かることです。そのため、初めての歯列矯正でも安心して進めることができます。
インビザラインは透明のマウスピースを使用しますので、会話中や食事中などでもほとんど目立つことなく生活することができます。見た目を気にして歯列矯正に踏み出せない人に非常におすすめの矯正方法と言えるでしょう。
インビザラインの歯列矯正はゆっくりと歯を動かしていきます。そのため、歯が動く際に出る痛みというのが少ないです。口の中を傷つけることがありませんので、口内炎などの症状が出ることも少なくなっています。
インビザラインを取り扱っている歯科医院は多いですが、インビザドクターが在籍している歯科医院を選ぶことを推奨します。全国に171名おり、自分の住んでいる地域の近くにもいるかもしれません。ホームページから検索することができますので、気になる方は一度調べてみてください。
マウスピース矯正ローコスト
費用目安 | 軽度・中度:22万~44万円 重度:50万/98万/120万 |
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治療範囲 | 奥歯を含む全顎 |
治療期間 | 軽度・中度:約3ヶ月~8ヶ月 重度:約1年 |
取り扱い医院 | 全国300医院以上 |
- 矯正のプロが指導してくれるので安心して矯正に臨める
- 国内自社製造なので品質も問題なし
- 低価格、短期間で矯正を完了できる
- 歯列矯正と同時にホワイトニングも可能
- 全国に300医院以上と提携しているため通いやすい
マウスピース矯正・症例実績810件以上、歯科矯正治療のプロである監修医の指導教育の元、自社に所属する国家資格を持った歯科技工士が、実際に歯がどのように動いていくかをシミュレーションし、治療計画の立案をしています。
マウスピース矯正ローコストで使用するマウスピースは、国内自社製造となります。他の国や他社に委託しないため高品質ですし、歯科技工士による完全オーダーメイドなのでズレるなどの不具合もありません。
治療期間は軽度から中度であれば3ヶ月~8ヶ月ほどで矯正が完了します。6回以上の方、コースプランの方はリテーナー(保定装置)費用が無料となっている点もメリットの一つ。
さらにマウスピース矯正ローコストであれば、マウスピースの内側にホワイトニング剤を付けることで矯正と同時にホワイトニングもできます。矯正が終わることには歯も白くなっているのは嬉しいですね。
提携している歯科クリニックは全国に300医院以上あり、自宅や職場の近くで探しやすいです。コストを抑えつつ短期間で治療を行いたい方には特におすすめなブランドです。
マウスピース矯正とワイヤー矯正のメリット・デメリット
ワイヤー矯正の特徴
ワイヤー矯正とは、動かしたい歯にブラケットやワイヤーなどを装着して矯正を行う方法です。歯の表面、もしくは裏側に装置を装着させますので、見た目的に目立つことがあります。では、ワイヤー矯正のデメリット・メリットを見ていきましょう。
デメリット
- 矯正装置が目立ちやすい
- 取り外し不可のため口腔ケアが必要
- 定期的に通院する必要があるためスケジュール管理が難しい
- 治療期間が比較的長めになりやすい
- 矯正している人の95%が痛みを感じる
ワイヤー矯正のデメリットと言えば、やはりワイヤーが目立つという点です。裏側に装着する、目立ちにくい透明や白色の装置を使うなどで対策はできますが、それでも最初の方は話している時、笑っている時、食事している時などに違和感を感じてしまうでしょう。
ワイヤー矯正は装置の取り外しが自分ではできません。ワイヤーに食べ物の残りが溜まりやすいため、歯磨きも入念にする必要があります。もし虫歯になると、虫歯治療が完了するまで歯列矯正はストップです。
定期的に通院する必要があるため、社会人だとスケジュール管理が難しい場合があります。それに加えて、矯正が完了する時期も長めで1年~3年ほどかかると言われています。すべてにおいて長期的な治療になると考えておきましょう。
また、ワイヤー矯正を利用する人の95%が痛みを感じるとも言われています。これは、歯が動く際に出るプロスタグランジンという物質が痛みを感じさせているのです。歯が締め付けられる、違和感がある、浮いてる感じがするなどストレスになってしまいます。
メリット
- 適応範囲が広く、ほぼすべての症例に利用可能
- 治療料金が比較的安く済みやすい
- 洗浄などの管理をしなくても良い
ワイヤー矯正最大のメリットは、出っ歯や受け口、叢生(そうせい)など様々な症例で使用することができます。マウスピース矯正だと不可能だと判断されても、ワイヤー矯正であれば矯正することが可能というパターンがあるのです。
治療料金は保険治療となることもあり、安く済むことが多いです。ただし、食事などをしていて装置が壊れたりすると追加で料金が発生する可能性もありますし、通院の数が多ければ多いほどそれだけ診察料もかかってくる点は覚えておきましょう。
ワイヤー矯正は自分で取り外しはできないものの、食事などの際にいちいち取り外さなくて良いという利点もあります。装置の洗浄や管理なども基本的に必要ありませんので、そういった手間が面倒な人にはおすすめです。
マウスピース矯正の特徴
マウスピース矯正とは、透明なプラスチック製のマウスピースを歯に被せることで行う矯正方法です。歯に被せるため自由に取り外しができ、比較的違和感なく矯正を進めていくことができます。口の中を傷つけることもありませんので、口内炎などになりやすい人にもおすすめです。
デメリット
- 1日20時間以上装着しておく必要がある
- 小児や骨格性要因を含む症例には適さない
- 外したマウスピースを管理する必要がある(清潔に保つ・紛失に気を付ける)
- 歯並びによってはマウスピース矯正だと対応しきれないことがある
マウスピース矯正はマウスピースを装着することで歯を移動させる矯正方法です。そのため、マウスピースは1日20時間以上は装着しておかなくてはいけません。つまり、1日で取り外れる時間の合計は4時間以内ということになります。
最初は意識して20時間以上装着するように計算していますが、慣れた頃に忘れて放置してしまうことがあるのです。それでは歯は動きませんし、それが結果的に治療完了までの時間を延ばしてしまう原因にもなってしまいます。
マウスピースは徐々に汚れが溜まっていきます。そのため、食事のときは外すなど意識していくことが大事です。それに加えて、外したマウスピースを洗って清潔にし、紛失しないように管理する必要があります。紛失したら料金もかかるため注意です。
マウスピース矯正は多くの矯正に活用できますが、歯の状態によっては矯正に適さない場合があります。重度な出っ歯や受け口になると、骨格のバランスの問題となるためマウスピース矯正では歯を動かすことが難しいです。まずは、歯科医師に相談してみましょう
メリット
- マウスピースは透明のため目立ちにくい
- 自由に取り外すことができる
- 金属アレルギーがあっても矯正できる
- 食事などに制限がなく歯磨きも自由にできる
- 矯正が終わるまでの期間が短め
- 矯正中の痛みが少ない
マウスピース矯正最大のメリットとも言えるのが、透明で薄い素材で作られているため矯正中だということが分かりにくいという点です。歯列矯正をしていることを周囲に知られたくない…という方は、マウスピース矯正を検討してみて下さい。
マウスピースは自由に取り外すことも可能です。デメリットの方でも書きましたが、1日4時間以内であれば外すことができます。食事中やデート中など自由に取り外しできるため、矯正を始めたばかりの頃はマウスピースに慣れていないため重宝するでしょう。
食事時には取り外すことで食事に制限はありません。何を食べてもしっかりと口腔ケアをすれば虫歯になるリスクは低く、歯磨きの方法もとくに変わったことをする必要はありません。
歯の状態にもよりますが、矯正が完了するまでの期間は比較的短めになっています。軽度~中度であれば、マウスピース矯正で早めに治療するのがおすすめです。ただし、後戻りもあるので歯科医師の指示にはしっかりと従いましょう。
矯正中は歯が動くため痛みが出ることがあります。これは歯が動く際に痛みの元となる物質が出ることで起こり、じわじわした痛みもあれば、突発的な痛みなど症状は人それぞれですが、マウスピース矯正は痛みが少ないと感じる方が多いです。
どういったタイプの人にマウスピース矯正はおすすめ?
以下のポイントに当てはまる人はマウスピース矯正をおすすめします。
- 歯列矯正中だということを他の人にバレたくない
- 食事や歯磨きの仕方を制限されたくない
- 矯正中の痛みをできるだけ少なくしたい
- できるだけ早い期間で矯正を完了したい
マウスピース矯正はとにかく矯正中だとバレたくない人におすすめです。マウスピースは無色透明なので普段通り生活している分には、ほとんど分からないようになっています。薄くできているため話すのにも違和感はありません。
取り外しできるため食事を気にしたり歯磨き中に気を遣いたくない人にもおすすめです。矯正中の歯が動く際の痛みも少ないため、痛みが苦手な人やストレスなく矯正を終えたいという人にもおすすめと言えるでしょう。
そして、矯正が完了するまでの期間が短いためすぐにでも矯正を始めて完了させたい人にもおすすめです。ただし、矯正が終わった後も一定期間はマウスピースなどで固定する必要がある点は覚えておくと良いでしょう。
マウスピース矯正ができない人の例
ここまでマウスピース矯正について見てきましたが、歯並びなどによってはマウスピース矯正を受けることが難しい場合があります。実際に担当医に見てもらわないと確実なことは分かりませんが、以下の方はマウスピース矯正が難しい可能性があります。
歯並び(重度な出っ歯・重度な受け口・重度の叢生)
まずは、歯並びによってマウスピース矯正が難しい場合です。歯並びが乱れていることを「不正咬合/歯列不正」と言いますが、その中にも複数の種類に分けることができます。その中でもマウスピース矯正が難しいのは以下の状態の場合です。
①:重度の出っ歯
上の前歯、もしくは顎が前方へ突き出ていることを一般的に出っ歯と呼びますが、専門用語的には上顎前突(じょうがくぜんとつ)と言います。見た目的にも目立ちますし、呼吸も口呼吸になりやすいことからも矯正治療を希望する人が多い症状です。
軽度から中度くらいであればマウスピース矯正も可能ですが、重度の出っ歯になってしまうと矯正ではなく抜歯になってしまいます。もし骨格的な以上も伴っている場合は外科矯正となってしまう可能性も考えられます。
②:重度の受け口
下の前歯、もしくは顎が前方へ突き出ていることを一般的に受け口と呼びますが、専門用語的には下顎前突(かがくぜんとつ)と言います。上記の出っ歯が上の歯でこちらは下の歯です。よく顎がしゃくれていると表現されるほど見た目に特徴があります。
受け口になると、発音障害やかみ合わせが合わないなど症状が出るため矯正を行う必要があります。しかし、重度の受け口は上と下の顎のバランスが悪いことから発生するのが特徴です。そのため、歯並びを調整するマウスピース矯正ではなく、抜歯や外科矯正になります。
③:重度の叢生(そうせい)
叢生とは、歯並びが凸凹に乱れていることで、一般的には乱ぐい歯と言われています。咬み合わせが悪い、見た目が悪い、唇を噛みやすいなどの理由から矯正治療の希望者が多いです。スペース不足によって引き起こすため、重度の叢生にもなると細かい調整が難しくなるためマウスピース矯正は困難になってしまいます。
口内環境(重度な歯周病・抜歯が必要なケース・インプラントが入っている)
歯並びは問題ないものの、口内環境が悪いことでマウスピース矯正ができない場合もあります。
①:重度の歯周病
歯周病とは、歯茎の腫れや出血によって引き起こされる病気です。軽度であれば問題ありませんが、重度になると顎の骨にまで影響を及ぼします。その結果、顎の骨が弱くなる・骨が溶けるなどの症状が出てきて歯を支えきれなくなるのです。
マウスピース矯正を含む歯列矯正は、顎の骨に埋まっている歯を人為的に移動させることが必要になります。顎の骨が弱まっているということは移動しやすいと思うかもしれませんが、歯の移動には歯の再生も伴う必要があり、顎の骨が再生するのが難しい場合はマウスピース矯正ができないのです。
②:抜歯が必要なケース
歯列矯正するためには、スペース不足を補う必要があります。歯並びが異常な場合は、まず外科的手術で骨の顎を修正するか、抜歯してスペースを確保する必要があるのです。マウスピース矯正の技術は年々上がっているため、今後は抜歯しなくても適応範囲に入るかもしれません。
③:インプラントが入っている
マウスピース矯正を含む歯列矯正は、天然の歯根がある歯が対象となる処置です。虫歯治療で詰め物や被せ物をしている歯であっても、歯根が天然でしっかりしていればマウスピース矯正として処置を進めることができます。
しかし、インプラントは人工歯根のためマウスピース矯正が難しいです。なぜなら、マウスピース矯正のように矯正力を与えたとしてもインプラントは動かないからです。そのため、インプラント部分に関してはマウスピース矯正の対象外となります。
マウスピース矯正が難しい場合はワイヤー矯正を
もし上記のような理由でマウスピース矯正が難しい場合は、ワイヤー矯正にて歯列矯正を行うのが第一選択なります。ワイヤー矯正を一定期間行い、その後マウスピース矯正へ移行することも可能です。まずは、矯正医と矯正治療の流れについて相談してみましょう。
矯正に関するよくある質問
最後に、マウスピース矯正についてよくある質問をQ&Aという形で解説していきます。マウスピース矯正について知らないことも多いと思いますので、ぜひ参考にしてみてください。
Q.支払いのタイミングはいつ?
数十万円を超える大きな支払いは、「精密検査で矯正可能と診断され、矯正装置を発注・または装置取り付けの直前」のタイミングで支払うことが多いです。
ただし、それまでにも数千円~3万円程度の診察料・検査代などの出費が必要になることもあります。歯科クリニックによって異なるので、事前に確認するなどの対応をしておきましょう。
Q.マウスピース矯正は保険適用される?
矯正歯科治療は、基本的に「保険適用外の自由診療」となります。なぜなら、保険診療とは病気や症状が出ている人がそれを治療する場合に適用される制度だからです。つまり、歯列矯正のように歯並びを整えたい、見た目を良くしたいという美容目的での施術には適用できないのです。
Q.保険適用となるパターンは?
マウスピース矯正はどんな条件下においても保険適用外となりますが、ワイヤー矯正であれば以下のパターンに限り保険を適用させることができます。
① 前歯3歯以上の永久歯萌出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするものに限る)
② 顎の外科手術が必要な顎変形症の手術前・手術後の矯正歯科治療
③ 厚生労働大臣が定める疾患に起因した咬合異常に対する矯正歯科治療
引用:日本矯正歯科学会

Q.医療費控除は受けられる?
歯列矯正は非常に高額なため、できるだけ料金を抑える方法を考えなくてはいけません。その中で最も分かりやすいのが「医療費控除」です。歯列矯正は、条件を満たすことで医療費控除を適用させることができます。簡単に詳細を解説していきます。
そもそも医療費控除とは、自分もしくは家族のために支払ってきた医療費が1年で10万円以上になった場合に収めた税金の一部が返ってくるというものです。そのため、医療費控除の対象となった歯列矯正であれば税金の一部が返ってきます。
①:医療費控除の対象になるには
歯列矯正における医療費控除の対象条件は、歯並びが悪いことで起こる?み合わせの不具合や発音などの機能面に影響が出ていると認められることです。「しっかり食べ物を噛めない」や「はっきりとした発音ができない」などの機能回復であれば適用されます。つまり、美容目的に歯列矯正では適用されません。
②:対象となる医療費
医療費控除の対象となる医療費は、その年の1月~12月までの1年間に支払った「治療費」と「交通費」です。ただし、自家用車などで利用したガソリン代などは対象外となります。あくまで公共交通機関の利用費となるので注意です。ローンやクレジット決済でも対象になります。
③:手続きはいつ行うのか
医療費控除の手続きは、翌年1月から申告することができます。医療費控除は還付申告となり、医療費を支払った年の翌年1月1日から5年以内ものもであれば申請可能です。申告するときは現在住んでいる地域を管轄する税務署で行いましょう。
④:いくら返ってくるのか
まずは、1年間で支払ってきた医療費から10万円(所得が200万円以下の場合は所得の5%)と保険金などで補填される分を差し引いた金額が医療費控除の対象金額です。その金額から所得税の税率をかけた金額が返ってきます。申告から約1ヶ月ほどで設定した口座に振り込まれます。
Q.矯正中に気を付けなければいけないことは?
これはマウスピース矯正とワイヤー矯正によって異なりますが、ここではマウスピース矯正中に気を付けるべき3つのことを紹介します。
①:装着時間を徹底する
マウスピース矯正の場合、取り外しができるため最初の方は違和感があって取り外す時間が長くなってしまいます。マウスピースにはメーカーごとに推奨される装着時間があります。1日10時間で良いものもあれば、20時間必要なとろこもあるのです。
マウスピース矯正を始める際に担当の歯科医師から装着時間に関することを教えてもらえますが、平均して20時間以上は装着しておくことが重要です。最初は違和感があってストレスかもしれませんが、装着時間が短いと矯正完了までの時間も長くなってしまいます。
②:紛失しないよう管理する
マウスピースを外したら必ず定位置に置くようにしましょう。適当なとこに置いておくと、たとえ家の中であっても紛失してしまうことがあります。それに加えて、踏んでしまうとマウスピースが壊れるだけでなく踏んだ足がケガしてしまう可能性もあるのです。
外出中はとくに注意しなくてはいけません。旅行先での食事中やお風呂ではとくに紛失しやすくなっています。マウスピースを紛失すると新しいマウスピースができるまで治療をストップしないといけないだけでなく、新しいマウスピース代が必要になるなど負担が大きいです。
ペットを飼っている人、小さいお子さんがいる家庭などでも管理が重要です。とくに犬などはマウスピースをおもちゃと思ってボロボロになるまで噛んでしまう可能性があります。手の届かないところに置いておきましょう。
③:間食や偏った食事はやめよう
絶対に間食してはいけないというわけではありませんが、普段よりも頻度を落とした方が治療をスムーズに進めることができます。とくに甘いお菓子や砂糖が多い飲料水などを多く摂取していると、しっかりとブラッシングしても虫歯リスクが高くなってしまいます。
栄養が偏った食生活もできる限り改善するようにしましょう。そうすることで歯の動きなども阻害されませんし、歯の動きにも影響がなくなります。最初は難しいかもしれませんが、徐々にでも改善していくことが歯列矯正には重要です。
Q.金属アレルギーでも大丈夫?
金属アレルギーとは、その名前の通りある特定の金属に対してアレルギー反応が起こる症状のことです。症状は人によって違いますが、金属アレルギーはⅣ型の接触アレルギーに分類されます。接触してから24時間~72時間ほどで症状が出始める遅延型のアレルギーです。
症状としては、金属に触れた部分がただれてしまったり、赤みが出るなどの接触性皮膚炎や粘膜炎になることが多いです。その他にも、口内炎や舌炎、手足などの皮膚に症状が出る難治性の掌蹠膿疱症という病気の原因になることもあります。
①:マウスピース矯正であれば金属アレルギーでも安全
マウスピース矯正は、ワイヤーやブラケットを使うことはありません。マウスピースの素材はポリウレタン製であるため、金属は一切利用していません。透明感があり厚みも0.5ミリと非常に薄いものですが、普通に使っていれば壊れることもない素材です。
身近なプラスチック素材であるため安全性に関しても非常に高いです。このように、マウスピース矯正であれば金属製品以外にも選択肢があるため金属アレルギーであっても使用することができます。金属アレルギーがある人は、マウスピース矯正がおすすめです。
②:ワイヤー矯正だとアレルギーが出る可能性あり
ワイヤー矯正は、金属製のブラケットとワイヤーを使用します。仮にセラミック製のブラケットを使用したとしても、成分的にはコバルト合金などがあるため完全に金属を排除できているわけではありません。奥歯に固定する装置も金属製です。
このように、ワイヤー矯正で使用する道具のほとんどが金属製、もしくは金属成分を含んでいるものになります。金属成分も複数あるため、どの金属に反応するかも分からないためアレルギー症状が出る人と出ない人もいるでしょう。
それでも、できるだけ症状がでないようなチタン製やセラミック制のブラケットを利用します。もし金属アレルギーがあるけどワイヤー矯正をしたい人は、まず少数のみ装着して経過を観察します。それで問題なければ追加していく流れになりますので、まずは担当の矯正医に相談してみましょう。
Q.マウスピースは同じものをずっと使うの?
マウスピースは定期的に交換する必要があります。矯正が完了するまでに使用するマウスピースの数は、歯並びの程度にもよりますが30~40枚が一般的となっています。
Q.矯正終了後の保証などはある?
マウスピース矯正が終わった後でも、しっかりと保証してくれる病院やクリニックはあります。それと同時に覚えておかないといけないことがあります。マウスピース矯正は、矯正が終わって歯並びがキレイになったとしてもマウスピースを装着する必要があるのです。
なぜなら、歯並びが元の状態に戻ろうとする「後戻り」と呼ばれる現象が起こるからです。これはワイヤー矯正でもマウスピース矯正でも同様なのですが、この後戻りによって再び歯並びが悪くならないようにリテーナーと呼ばれる保定装置を装着しなくてはいけません。
リテーナーには3種類あり、「ワイヤー固定式」「プレート型リテーナー」「マウスピース型リテーナー」のいずれかを使用します。ワイヤー固定式であれば効果は高いものの取り外しができず、プレート型は安定性はあるが見た目や制作費用がかかります。
これまでマウスピース矯正をしてきた人であれば、マウスピース型リテーナーがおすすめです。同じく透明なマウスピースを装着するため見た目を機にせず使えます。ただし、耐久性に関して不安定な部分があるため歯科医師と相談して決めましょう。
因みに、保定期間は約2年間とされています。しかし、歯は移動し続けますのでできるだけ長期間装着することを推奨しています。定期的に自分でチェックし、何か不安なことや困ったことがあれば治療を依頼した病院やクリニックに相談することが重要です。
Q.今虫歯があるけど、矯正はできる?
もし歯列矯正開始前に虫歯が見つかった場合は、まず虫歯治療を行ってから矯正治療の方へ移っていくことが基本となります。虫歯の程度にもよりますが、軽度であれば詰め物とし、重度であれば詰め物や被せ物をするなどの治療を行います。
初期虫歯程度だった場合は、矯正治療を行いつつ経過観察も続けていくケースがほとんどです。虫歯治療で使用される詰め物や被せ物による影響で噛み合わせが変わることもあり、矯正治療が完了した後の歯の動きも考えた上で治療してくれます。
Q.矯正って虫歯になりやすいって聞いたけど大丈夫?
歯列矯正をしている場合、虫歯リスクが高くなることもあります。
①:ワイヤー矯正の場合
ワイヤー矯正の場合、矯正器具に汚れが付着することで虫歯になりやすいことがあります。ワイヤー矯正の器具は凸凹になっているため、そこに汚れが付着しやすいのと同時にブラッシングしにくいという特徴もあります。それが結果的に歯垢などになり、虫歯の原因となってしまうのです。
②:マウスピース矯正の場合
マウスピース矯正の場合は、矯正器具を取り外すことができるため口内を清潔に保つことができます。いつも通り歯磨きが行えるので、虫歯リスクはワイヤー矯正に比べると低いですが、歯の表面にアタッチメントを装着している場合などは汚れが溜まりやすいため注意が必要です。
もし矯正中に虫歯になってしまった場合は、こちらも虫歯治療を優先的に行います。ワイヤー矯正であれば矯正装置を外して治療を行い、マウスピース矯正であれば普段通りの虫歯治療が行われます。どちらの矯正方法でも、虫歯治療中にかみ合わせなどが変化して新しい矯正器具を作らないといけないこともありますので、虫歯にならないように注意することが重要です。
Q.虫歯予防はどうしたら良いの?
歯列矯正中は虫歯になりやすいですが、事前に予防することでリスクを減らすことができます。予防も簡単なものなので、ぜひ実践してみましょう。
①:ブラッシング
マウスピース矯正の場合は、取り外しができるため普段より入念にブラッシングすることで虫歯リスクを抑えることができます。取り外した後だけでなく、マウスピースを付ける前にもブラッシングすることが重要です。そして、マウスピースの清潔感も保ちましょう。
一方のワイヤー矯正の場合は、取り外しができない上に汚れが溜まりやすくブラッシングがしにくいという特徴があります。そのため、ワイヤー矯正の場合は通常よりも時間をかけた入念なブラッシングをする必要があります。
普通の歯ブラシによるブラッシングに加えて、歯間ブラシやデンタルフロスなどを使って汚れが溜まりやすい箇所もしっかりと磨けるようにしましょう。注意点としては、力強くやると装置が外れてしまう可能性があるため、力加減は優しめにするのがおすすめです。
②:食生活を考える
これを食べてはダメ!というものはありませんが、甘いものを多く摂取する、栄養に偏りが出てしまう食生活だと虫歯リスクが高まります。間食や多量のアルコールなどは抑えると良いでしょう。
③:しっかりと通院する
歯列矯正は定期的な通院が必要となります。その際に歯の調子なども観察しますので、何か問題があればすぐに対処することが可能です。そのため、予約した日にはできるだけ通うようにし、スケジュール管理をしっかりとすることも虫歯リスクを減らすきっかけにもなります。